人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

柔軟に考えないと、疲れがピークに

長時間のフライトの後、動き回れるのだろうか

 いよいよ、パリへの旅行が来月に迫ってきた。旅行に必要な情報も、ちゃんとノートに整理して、現地に行ったつもりになって、シュミレーションしてみた。それにリュックに荷物も詰めて、自分で背負えるかどうかも確かめた。一番大事なパスポートとお金、飛行機のe-チケットもいつもの貴重品ベストに入れて、これで何もかも万全だ、と思っていたら、一つ、気になることが頭を掠めた。それは今回のフライトは夜便で、機内泊になることだった。実を言うと、私は今まで、朝早く乗って夕方現地に着く便にしか乗ったことがない。その日のうちに現地に着けます、というのが売りのフィンランド航空をいつも利用していたが、今回はどうも様子が違う。なぜならロシアのウクライナ侵攻のせいで、フライト時間が9時間から14時間へと、大幅に長くなったからだ。正直に言うと、パリに昼間着くから、いつもと違って明るいから心強いなどと、単純に考えていた。

 だが、よく考えてみると、どう見ても、一日損をしているとしか思えない。機内泊だから、ホテル代が一日分浮いたなどいう、短絡的な発想で済ませられるわけもない。いつもとは状況がまるっきり違うのだと、今更ながら気が付いた。それなのに、私ときたら、いつもの習慣通り、計画を立てていたのだから、お目出たいと言うしかない。どういうことかと言うと、私の考え方は柔軟性が全くなく、判で押したようにいつものように行動しようとしていた。つまり、かつてのようにホテルに宿泊した翌日にはまず、現地の下見に行って場所を確認して安心しようとしていた、しかも今回はその翌日ではなく、当日に。

 以前は到着するのは夜だったので、その日の疲れを熱いシャワーで洗い流し、ベッドにもぐりこんで眠ることで完全に解消できた。だが、今回はそれができそうもない。なぜなら飛行機がパリに着くのは朝の9時40分で、ロワシーバスでオペラ座まで行くのにどう見ても1時間はかかる。そうなると、11時頃にオペラ座に着いたとしても、そこからタクシー、あるいはバスでホテルに着くのは早くて、お昼ごろになる。すぐにホテルに行ったとしても、おそらくチエックインはできないだろうから、荷物を預けてどこかで待つしかない。いや、とんでもない、パリに来て暇を持て余すなんてことはできるわけもない、ルーブルやオルセーが歩けばすぐそこにあるのに、それらを見逃すなんてことはあり得ない。

 それでも、私は昔からの習慣が捨てきれず、TGVに乗るために利用するモンパルナス駅や、ユーロスターの出発駅のパリ北駅に下見に行こうとしていた。そのためにサンジェルマンデプレのバス停にほど近いホテルを予約した。旅行ノートのホテルに着いたらすることリストに4つものミッションを書き記した。例えば、バスに乗って、モンバルナス駅に行き、TGVの乗り場を下見し、ついでに泊まるホテルを確認する、だの、モンパルナスからバスで北駅に行き、ユーロスターの乗り場を下見する、だのという、てんこ盛りの時間がかかる課題だった。

 まあ、当然のことだったが、すべて旅行の準備が整ったと感じた途端、思いもよらぬ疑問が湧いてきた。それは、果たして、十何時間ものフライトの後、そんな沢山のことを実行する体力が残っているかどうかということだった。いわば、私の計画はどう見ても、机上の空論に過ぎないのだ。考えてみると、フライトのすぐ後に、あちらこちらを下見して歩くと言うことをしたことがない。今まではホテルで休息をとると言う、ワンクッションが必ずあった。そのワンクッションがなければ、どうなってしまうのだろう。ふと私の頭を掠めたのは、コロナ以前の5年前に行ったモロッコでの体験だった。あの時、3泊4日の強行軍の日程のせいで、体調を崩してバスルームで夜を明かした。だから、なんとしてもああいう思いだけは二度としたくない。パリに着いて調子に乗る気持ちもわからないではないが、初日の行動はほどほどにと自分を戒める勇気が必要だ。早速、初日の計画を変更し、ワンクッションを置くことにしよう。もっとも、身体は何より正直だから、そんな心配はいらないのかもしれないが。

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