人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

引っ越し荷物は台車でOK!

今週のお題「引っ越し」

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引っ越し費用はなんとゼロ円!

 同僚に聞いた話では、引っ越し先が目と鼻の先の距離でも業者を頼むと十何万も取られてしまうのだとか。同僚の友だちは会社の寮からタクシーでワンメーターのところに引越しをした。単身者なので荷物などたいしてあるわけもない。それなのに15万もの料金を支払ったという。私の場合は車を使うこともなく、身体を使って荷物を運んだ。要するに台車に荷物を乗せて何回も往復した。歩いて約10分なのでたいして抵抗もなくできた。台車は馴染みの酒屋さんで借りた。どうせビールは飲むのだから、注文をするついでに台車をちゃっかり借りる交渉した。本当は引っ越しやさんが使うベニヤ板にコロコロが付いているのが、見るからに使いやすいのだが、贅沢を言っている場合ではなかった。

 台車を使って、タンス、冷蔵庫、洗濯機など大物を運んだ。最初は台車なんかであんな大きなものが運べるのかと心配だったが、これが意外にうまく行った。想像以上に台車は家財道具を運ぶのに役立ってくれたのでびっくりした。実をいうと、新しい家までは少し坂道もあったので内心ひやひやしたが、何とか無事運び終えたときはホッとした。当然ながら、通りには野次馬がいて、「なんか次のところは近いみたいよ」と囁く声が聞こえた。その声の主は私がいつも仲良くしていた隣のおばさんだった。急遽引っ越しをすることになったのはこの女性のせいだった。私はもう他人の言うことなどに耳を貸さなかったし、何を言われても気にしなかった。

 昔住んでいたアパートが突然立ち退きになった。アパートと言っても2階建ての家でその1階を借りていた。原因は隣人がアパートの前に増築をしたからで、太陽の光が全く差さなくなった。「お宅には悪いと思うけど、息子が夢だからそれをかなえてやりたいのよ」と隣人は私に当然のように言い放った。それまで僅かでも明るかった私の部屋は真っ暗闇になった。一番厄介なのは、洗濯物が乾かなくて、部屋がじめじめとして気持ちが悪いことだった。当然ながらすべての物にカビが生えだした。それまでカビなどとは無縁だった部屋が暗くて、ジクジクした湿地帯のような状態になった。そうなると、もはや人間が住む場所ではなくなった。耐え切れず不動産屋に駆け込んだ。

 隣人の息子が私が害を被ると知りながら、なぜそんなに増築したいのか。それは小さな部屋を建て増しして、絵やら何かを飾って楽しみたいからだった。たとえ、誰かの部屋に日が差さなくなるとわかっていてもそうしたいのだ。人は誰でも気持ちよく生きる権利があることは私も知っている。当時は誰かを不幸にしてまでそうしたいという気持ちがわからなかったが、今なら理解できる。誰かを不幸にしてもやはり自分の夢を叶えたいのだ。不動産屋の社長が何とか増築をやめさせようと飛んできた。何度も息子を説得してくれたのだが、やはり夢はそう簡単に譲れないらしい。あれよあれよという間に小さな部屋は完成し、私の部屋の窓は塞がってしまった。それでもまだ私はそれから部屋がどういう状態になるかは本当の意味で理解していなかった。ほんのちょっと暗くなるだけのことと簡単に考えていた。

 引っ越しの話に戻ると、台車はもちろん役に立つ道具なのだが、あれは箱型になっていないのが短所だとも言える。大物はさておき、それ以外の衣料品や本などを運ぶのに意外にも役立ったのが、ベビーカーだった。近所の知り合いがもう使わなくなった大型のタイプのベビーカーを持っていた。時々大量の買い物の時使うと便利だと言っていた。「急に目と鼻の先に引っ越しすることになった」と嘆いたら、「これでちょっとした荷物は運べるよ」とベビーカーを貸してくれた。車のわっかがシュルシュルとスムーズに動いてくれて、何回も往復して身の回りの物を運んだ。そうやって、私の引っ越しはお金をかけることもなくゼロ円で終わった。