人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

自力で引っ越しは大変

今週のお題「引っ越し」

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一番の難敵はノッポの大型冷蔵庫

 友人が市営住宅に引越した。引っ越しは費用を節約するために自分たちでやることにした。友人の夫は何度も他人の引っ越しを手伝って、冷蔵庫などの大物を運んだことがあった。だから業者の手を借りなくても自力で出来ると判断した。トラックはレンタカーを借りることにしたが、自分は免許はあるが運転はしたことがないペーパードライバーだった。だから結婚して家を出ている息子に頼むことにした。電話をすると、「運転できるかなあ」などと気弱なことを言う。でも物事にこだわらない性格なので、「何とかなるだろう」と引き受けてくれた。

 引っ越し先は歩いて35分の市営住宅の7階の部屋でもちろんエレベーターは付いているので何の問題もなかった。車だと通りを真っすぐに行くだけで着いてしまう場所だった。「車だと速いのに電車だと時間がかかるねえ」と息子が嘆いた。前日に下見に行ってみると、なんと駐車場から市営住宅の玄関まで通行禁止になっていて車が入れなくしてあることに気が付いた。これは台車なしではエレベーターの前まで荷物を運べやしない。友人は息子に電話をして台車を借りてくるように頼んだ。当日息子はトラックを借りて、9時半ごろ友人宅にやって来た。車の料金は3時までで1万5千円だと言う。それにロープと台車で3千円のオプションが付いて、すべての費用は1万8千円だった。

 息子が「トラックの高さが180cmしかないけど、冷蔵庫、乗るかなあ」と心配そうに言った。友人の夫はもしだめなら横にするしかないと諦めていた。本当は冷蔵庫と言うのは横にしたら壊れてしまう、でもこの際仕方がない。少しくらいなら大丈夫、最悪の場合は壊れてもいいからとにかく運ばなきゃだった。第一の問題はまずは冷蔵庫を住んでいるアパートから外に運び出すことだった。大型冷蔵庫は使っているだけなら便利だが、それを運ぼうとすると厄介なこと極まりない代物だった。もちろん冷蔵庫の中身はすべて放り出して空なのだが、それでも信じられないくらい重い。夫と息子だけでは無理なので、友人も手伝わされた。と言っても、か弱い彼女に持ち上げる力などなく、ただ押さえているだけなのだが辛かったようだ。外に出した冷蔵庫を台車に乗せて数段の階段を下りなければならない。何とか無事に降ろし終わったら、今度はトラックの荷台まで上げなければならない。

 夫が力持ちなので、冷蔵庫は荷台に上がったが、やはり背が高すぎて立てられない。それで斜めのままで運ぶしかなかった。ただ、冷蔵庫というのは横にすると中から水がやたら出てくる。それで古い布団や毛布をあるだけ敷いて他の荷物が濡れないようにするしかない。引っ越し屋さんが大型家電を運んでいるのを偶然見たことがあるが、さすが慣れていて、トラックも大型で、しかも自動で荷台の前の部分が上下に動くようになっている。だが借りたトラックはそんな設備は付いていない。まさにあれがあったらいいのに!とつくづく思った。

 息子の運転で市営住宅の敷地までやって来た。トラックの荷台から、台車の上に冷蔵庫を降ろしていると、ひとりの中年男性が近づいてきた。誰かと思ったら市営住宅自治会長だった。この忙しい引っ越しの真最中、やたらと話しかけて来る。「あなたは引越すの?それとも引越して来たの?」などと聞いてきた。彼が何を言いたかったのかと言うと、「そうならそうで一言声をかけてくれたなら、駐車場の鍵を開けてあげたのに!」ということらしい。目の前で鍵の束をジャラジャラさせて見せてくれる。でももう荷物はエレベーターの前まで運び終わっている。最後に残るは一番の難敵の大型冷蔵庫だけだった。

 大型冷蔵庫を台車に乗せて、エレベーターの前までやって来た。さて、背高のっぽの冷蔵庫は果たして乗れるだろうか?大丈夫、乗れた!セーフだった。7階に着いて、エレベーターを降りて廊下の方に出ようとしたら、壁が邪魔して通れなくなった、廊下からエレベーターの踊り場にかけて、そこだけ天井が低くなっていた。さてどうしようか?すると夫が驚くべきことを口にした。「台車から冷蔵庫を降ろしたら通れるんじゃないか」。友人と息子はあっけに取られた。「台車から降ろして冷蔵庫をどうやって運ぶの?」と戸惑うばかりだった。だが、結果は嘘のようなことが起きた。冷蔵庫には元々キャスターというものが付いていたので、コロコロと簡単に転がった。柔らかい床の上ではうんともすんとも反応がなかったのに、固いコンクリートの上ではキャスターは威力を発揮した。そんな訳で、無事冷蔵庫は友人の部屋まで運べたのだった。

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