人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

理想はスマート、されど実際はドタバタ

今週のお題「引っ越し」

f:id:mikonacolon:20220309073709j:plain

荷物を運ぶのに宅急便の台車を借りようとしたが

 引っ越しとなると、頭が痛いのが長年押し入れに溜め込ん荷物のことだ。ミニマリストを目指して努力していた私は以前は何でも捨てていた。どうせまた買えば済むし、近所のスーパーが私の冷蔵庫代わりなのだから問題ないと信じて疑わなかった。だが、想定外のことが起きた。コロナウイルスの流行で、物資の流通が滞って、店から品物が消えてしまった。まるでS F 小説さながらの光景を目の当たりにして激しく動揺した。ありえない状況に正気を保つのがやっとだった。薬局にマスクが売っていないから、手作りするしかないのだが、その材料のガーゼさえも手に入らなかった。もしも、以前大量の布と古びたミシンを捨てなかったら、どんなによかっただろうか。”覆水盆に返らず” で後悔しても遅いのだった。それで、その時は役に立たないと思うもの、こんなのは必要ないと判断した物でも、いつかは役に立つときがくるのではないか。もちろん、その「いつか」ははっきりとは分からない、もしかしたら、そんな日は来ないかもしれない。でも、何の変哲もない、些細なものでも無いより、あった方がいいに決まっている。その時点で自分にとって最も必要なものなのだから、何よりも有難みを感じて感謝さえもしてしまうだろう。

 そんなわけで、コロナ禍にあっては、荷物をやたら溜め込む傾向にあるのは確かだ。つまり、断捨離できない体質になって、物を大事にするようになった。というよりもそう簡単には手放さなくなった。完全にもう使えない状態にならない限り、さようならと言って捨てられない。洋服に至っては色やデザインが気に入らないからとか、もう着なくなったからとかそんなあやふやな理由ではとても処分する気にならない。いつかはこれがあってよかったと思える日が来ると信じているからだ。

 前置きは長くなったが、友人も私同様、物が簡単に捨てられなくなった人種のひとりだった。その友人が引っ越しをすることになって考えたのが、すぐに使うものがどこにあるか不明な状態はどうしても避けたいということだった。だから他の荷物とは別に先に運び込んでしまいたかった。幸いにも引っ越し先は歩いて35分の場所で、すでに部屋の鍵は手元にあった。大物の家具や段ボールに詰めたどうでもいいような?荷物を運ぶのは引っ越しの日で構わない。もしも、引っ越し先がもっと遠くだったら、先に運び込もうなどとは考えもしなかっただろう。だが、歩いて行ける距離なので、どうしてもウズウズしてしまって、何かをしたくてたまらなくなるらしい。

 それで友人はいつも散歩の途中で通る某有名宅急便の店舗の前においてある台車のことを思いだした。台車と言っても、友人の頭の中にあったのは箱型の荷物入れが乗っかっているタイプだった。街で時々見かける宅急便の人はあれを軽々と扱って、荷物をテキパキと配達していたからだ。あれなら、体力が続く限り往復すれば、どんなにか荷物が運べるだろうかと考えたら楽しくなった。もしあれが借りられたならどんなにいいだろうか。自分で勝手に思うだけならいいのだが、本当に店の人に聞きに行った。ダメかと思ったら、なんといつでも使っていいと言ってくれた。

 だが現実は厳しかった。夫に自分の考えを打ち明けたら、「あんな煩いもの、迷惑なだけだからやめとけ!」と言われてしまった。でも友人はそんなことを気にもせず実行に移すことにした。宅急便の店舗に行き、どれでもいいですよと言われたので、迷わず箱型の台車を選んだ。持ち帰ろうとして押してみるが全く動かない。少し力を入れて押してみたら、やっと動いた。家まで片道20分の距離を押して行ったが、中は空なのにやたらと重かった。空なのにすでに重い!それなのにこれから荷物を乗せるなんてことは考えられなかった。傍から見て楽そうなのに、実際は重いんだなあ!と台車を借りたことを後悔した。

 もうこんなの無理!と台車を返却に行こうとしたら、スマホに宅急便の店舗から連絡が入った。台車が必要になったのですぐに返して欲しいとのことだった。すぐに返しに行くと、会社のロゴが入っているのは貸せないので、普通の台車なら貸してくれるという。そこできっぱりと断ればいいのに、友人は台車を借りてしまう。またその台車が押すと煩い音がして、動きも悪い最悪の代物だった。平坦な道でもガラガラと騒音を立てるし、スムーズに動かないのでイライラして、持ち帰るだけでも一苦労だった。こんな不安で仕方がない台車で荷物を運ぶことは考えられなかった。迷いはなかった。すぐに決断して返しに行った。それから友人はどうしたかというと、海外旅行に使う大きなリュックで身の回りの物を運んだそうだ。なんだか旅行気分に浸って楽しかった、などと呆れたことを言っていた。

mikonacolon