人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

隣人たちはおひとり様?

今週のお題「引っ越し」

f:id:mikonacolon:20220310073759j:plain

引っ越し先では戸惑うことが多くて

 今のようなコロナ禍にあっては、引っ越しは移動するという点において、ちょっとした小旅行のようなものと言っていいだろう。未知の世界にワクワクするが、現実は思ってもみなかった事態に戸惑い、あれやこれやと考え込んでしまうようだ。私の友人もまさに今そういう状況に置かれている一人だ。まずは、水道の元栓を開けるときにつまづいた。水道局の係りの人は電話で玄関先に水道の元栓がある小さな扉があるので、そこを開けたらレバーを90度に回すだけでいいと言った。でも実際は確かにロッカーのようなものが並んではいるが、どれがどれだかさっぱり分からない。それで友人は水道局にかけるよりは、隣の人、あるいは同じ階の住人に聞いた方が速いと判断した。なぜなら水道局の電話はなかなか繋がらないからだ。

 友人の部屋は7階にあって1号室から10号室まである。まずは隣の部屋のインターホンを押してみた。でも応答がない。それで他の部屋のも押してみるのだが、誰もいないようだ。どうやら昼間はみんな仕事やら用事で出かけて留守らしい。困り果てた友人は仕方がないので、階段を下りて下の階の人に聞くことにした。おそらくその人は突然来られて驚くだろうが、こちらも緊急事態なので悪いが許してもらいたい。インターホンを押したら応答があったのでホッとした。扉を開けて出て来たのは60代の女性で、年の割には若く見えた。水道の元栓がわからないので助けてもらいたいと頼むと、快く引き受けてくれた。創価学会の人らしく、若い人?が引っ越してきてくれて嬉しいと笑顔で言うので仰天した。

 彼女はこの団地に住んで13年目で、元々は別の団地に住んでいたが、そこが取り壊しになったので引っ越してきたそうだ。ここの住人は抽選で当たった人ではなく、事情があって様々な地域から越してきた人が大部分だと言う。この団地は平成17年に建てられた、市営住宅としては比較的新しい物件だった。ここの住人で一番若いのは50代の人であとは高齢者が多い。だからかいつ下見に来てもなんだかひっそりとして、他の団地に比べると活気がないようだ。部屋一人部屋が多く、高齢者のひとり暮らしが多いのだが、昼夜を通して働いている人のいることを知って驚いた。友人は引っ越しの挨拶に行った時、応対してくれた老婦人は84歳でとても話好きで、社交的な人だった。オミクロンが終わったら遊びに来るようにと言ってくれた。その時、自治会費を集める係りの人がちょうど隣の部屋だったので、いつなら在宅なのかを尋ねてみた。するとその人はもう72歳なのに仕事を2つも掛け持ちしているので、あまり家にはいないと聞かされた。

 高齢者はいつも時間と暇を持て余しているとばかり思っていた友人は衝撃を受けた。確かにそんなステレオタイプの年金で何とかやっていける高齢者も居るにはいるが、そんな人たちばかりではないのだ。引っ越して10日も経つのに友人は未だに同じ階の人たちに挨拶ができていない。何度か出向いてはいるのだが、日曜日に行っても留守で会えなかった。友人の部屋は昼でも夜でもとても静かだ。引っ越す前に住んでいた部屋は子供の鳴き声や上の階の娘さんがトレーニングをしているのかゴロゴロとマシンがうなる音で充満していた。良くも悪くも人の匂いがぷんぷんしている環境だった。それが当たり前の日常だったのに、そんなに遠く離れているわけでもないのに、なんだか人里離れた場所に来てしまった感覚に陥ってしまう。こんなにも天文学的にあり得ないほど生活音がしないと、どうしても喧噪が恋しくなってしまう。だから人が集まるどこかに、お手軽にはスーパーがあるショッピングセンターに、自然と足が向いてしまう。

mikonacolon