人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

チョコレート屋のねこ

この本読んだ日は、チョコレートの夢が見られそう

 この本を買ったきっかけは本屋で絵本を見ていたら、なんだか美味しそう、いや、面白そうな本だと思えたからだ。最初に断っておかなければならないのは、この本屋ではすべての絵本にビニールが掛けられていて、中味がどうなっているのか見当もつかないので、表紙だけで判断しなければならないことだ。立読み禁止、特に子供の座り読みはお断りなのだ。そんな訳で、絵本のあるコーナーにはどこの本屋でも見かけるような親子の姿はない。誰一人いない書棚の前で私は自分の頼りない想像力を最大限に発揮して、本を選んだ。普通なら、中味をペラペラと捲ったりし、あるいは本の帯にある宣伝文句を読んだりして、ゆっくりと試行錯誤しながら本を選べるのだが。

 だが、その時はこの絵本に関する情報は表紙と裏表紙のみで、あとは自分のなんだか良さそうという感みたいなものだけが頼りだった。まず表紙を見ると、思わず涎が出そうなチョコレートのお菓子やらクッキーに囲まれて、その中心にネコが座っている。またそのネコが『チョコレート屋のねこ』らしく、美味しいチョコレート色をしているかのように私には見えた。値段を見ると、1500円でこの価格を高いと見るか、妥当だと見るかはその人次第だ。私は絵本の値段としてはまあ、普通だと判断した。

 正直言って、絵本を事前の情報なしで、中身を確かめもせずに買うのは初めてだった。海の物とも山の物とも分からない、未知の絵本をいきなり買ってしまうことに抵抗は少しあったが、その時は絵本をどうしても買いたい気分だった。それで躊躇なく手に取り、レジに持って行った。家に帰って、絵本のビニール袋をドキドキしながら破って開けた。これまで宣伝文句だけで、舞い上がり、よく考えもせずに注文してしまい、何度も痛い目に会って来た。そんな愚かな失敗ばかり繰り返している私だが、今回ばかりは月謝を払ってきたせいで、少しは本を見る目があったのだろうか、幸運なことに期待は裏切られなかった。中身はこうなっていた。

 

 

 

 上記の写真2枚からわかるように、ストーリーもなかなか面白いが、絵を見ているだけでも十分楽しめる。今回の経験で、何も知らない状況で、いきなり絵本と出会うのはなかなかスリルがあって新鮮なのだとわかった。それを可能にしてくれるのは絵本の作者の想像力豊かな物語と素晴らしい絵のセンスに他ならない。突然”チョコレート屋とねこと掛けてなんと解く”だなんて言われても、何も言葉がでてこない。いくらない頭をひねって絞り出そうと頑張ったところで何も浮かばなかった。そりゃあ、私にだってネコが何らかの行動を起こすのだろうくらいのことは見当がつく。だが、それを具体的にイメージすることは悲しいかな、できない。どうやら目に見えない物が見える人間ではないらしい。

 この『チョコレート屋のねこ』は一言で言うと、ねこが巻き起こす奇跡の物語なのだ。小さな村に昔から代々続くチョコレート屋があって、そこに一匹のねこがいる。そのチョコレート屋は今ではもう店の中の商品には埃が被っているような有様で、村人は誰も近づかない。誰にも相手にされなくなったのはどうしてなのか、その理由は書かれていないので分からない。だが、一番気になるのはどうしてこうなったかより、これからどうなるか、どんなことが起きるのかに尽きる。もうすべてを諦めていたかと思われたチョコレート屋の老店主がある日のこと、何を思いついたか、ネズミの形をしたチョコレートを作った。

 すべてはそこから始まった。ネズミと言えば、ネコと切っても切れない間柄であり、昔から猫はネズミを捕まえるのが仕事だ。ネコはおじいさんが作ったネズミの尻尾をかじってみたことで、チョコレートの美味しさに感激する。チョコレートの魅力に嵌ったネコは何とか村の皆にこの素晴らしい味を知ってもらおうとある行動を起こす。ネコがまるで現代のセールスマンのように大活躍するのが面白いし、また目でもチョコレートの美味しさを味わうことができる。1500円払っても元が取れたと思える絵本なのだ。

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