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ランドセルの色、好きな色ではダメなの?

▲6月7日の朝日新聞夕刊から

色は50色、好きな色を選べるはずなのに

 通勤途中、近所で登校中の小学生を見かけることがある。彼らが背負っているランドセルの色が様々なことに時代を感じてしまう。男の子は黒、女の子は赤でと、それが当たり前で、それしか選択肢がないと思い込んでいた。ピンクがいいとか、もっと他の色がいいだなんてことは考えもしなかった。ランドセルの色は制服と同じで規則で決められているのだとばかり思っていた。規則を破るなんてことは勇気のいることで、集団の中で目立つことだ。だから、少しなんか変だなあと思っても言わない方が、日々を安心して穏やかに過ごすことができた。ランドセルの色にこだわるなんてことは余計なことだった。

 ランドセルメーカーの土屋カバン製作所は「今年、顧客の好みの多様化に対応するため、約50色を用意した」そうだ。ところが、購入したランドセルの色のランキングを見てみると、少し意外な結果になっている。男の子の上位5色は1位が黒で58.4%と圧倒的人気で、次は紺で17.6%、それから青、緑、こげ茶と続く。どの色も男の子色?のように感じてしまうのは私だけなのだろうか。本当に男の子は黒が好きなのだろうかと疑問に思ってしまう。大人には想像もつかない、それの何が面白いのか理解不能なことをやってのけるのが本来の子供だ。子供の好きなように選んだのならこんなステレオタイプな結果になるのだろうか。もっと性別を超えたバラエティに溢れた選び方をするだろう。黒に集中すること自体がなんだか可笑しい。

 では女の子はどんな色を選んだのだろうか。女の子の上位を見てみると、1位はピンクではなくて、紫と薄紫で、24.1%、次は桃で21%。それに続くのは赤で17%と全体の6割をこの3色が占めている。4位は私も気になっていた水色で、近所の小学生の女の子もそうだった。どうやら女の子は水色が好きらしくて、普通に考えたら性別を感じさせない中性色だと思うのだが、男の子がその色のランドセルを背負っているのは見たことがない。水色は女の子の色?とでも思っているのだろうか。私個人としては、子供の頃から水色は大好きで、大人になって水色のランドセルがあるのを知ってすごく羨ましかった。ピンクよりも落ち着ける色で、とても綺麗な色だと思う。

 気になったのは、5位にうす茶が6.6%で入っていることで、これはもう大人の感覚で選んでいると言ったら、私の偏見でしかない。大人の女性は好きな色はピンクやオレンジであっても、普段持ち歩くバッグは落ち着いた色、例えば、グレー、茶、こげ茶、黒を選ぶ傾向にある。それは私だけかもしれないが、色鮮やかな原色のバッグを持っている人は数少ない。だから、人目に付く洋服やバッグではなくて、小物に好きな色を選ぶことが多い。ひっそりと、こっそりと自己満足に浸っているのが現実だ。

 ジェンダーレスを目指す今の世の中からすれば、女の子が黒を選んでも何の問題もない。実際大人の女性は黒が好きだから、それが子供であっても何の不思議ではないはずだ。なのに、女の子だからと言うだけでこうあるべきという色眼鏡で見ようとするから自由でなくなるのだ。では具体的にはその自由を阻むものは何なのだろう。

 土屋カバン製作所の広報担当者は、売り場で「赤が欲しい男の子が”女の子カラーだから”と諦めたり、女の子が黒を選びたいのに”男の子の色だよね”と親に言われる光景を目撃した」と言う。どうやら、選ぶ子供自身にもいつの間にかステレオタイプなイメージが刷り込まれているようで、周りからとやかく言われたくない気持ちの方が強いようだ。おそらくその子が育った環境にも影響されるし、何よりも社会全体が異質なものに対する許容度が低いことも問題だ。女の子の黒も、親は好きな色を選んでいいと言ったにも関わらず、建前はそうでも気持ちとしてはしっくりこないのが現状なのだろう。

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