人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

西友で買ったTシャツ

今週のお題「二軍のTシャツ」

値段の割には質もいい、なのに押し入れから発見

 もう今では無くなってしまったが、歩いて30分ほどのところに西友ストアがあった。1階は生鮮食料品、2階は衣料品と家庭用品売り場だった。西友ストアがまさか潰れるなんて想像もできなくて、未来永劫そこにあるものだとばかり思っていた。2階にある衣料品売り場に売っていたTシャツは色の種類こそ少なめだったが、胸にプリントされた絵柄を選ぶのにどれにしようかと迷ったものだ。Tシャツ1枚680円なので、何枚も買った覚えがある。素材は綿100%だし、汗を吸ってくれるので着心地がとてもいい。お気にいりでも何でもなくて、安くて、あれば何かと役に立つということで、とりあえず買うことにした。野球で言えば、お気に入りが1軍ならば、さしずめ西友ストアのTシャツは2軍に属していた。そして、1軍のピンチを救ってくれるのも2軍の役目だといえる。

 いつか役に立つだろう的な考えから、気軽に、とりあえずの感じで衣装ケースに入れて置いた。押し入れにしまい込んで、見えないので当然、その存在をすっかり忘れていた。だが、最近押入れを散策する必要があった。それは、今まで愛用していた何枚かのTシャツが少々くたびれて来たというか、プリントしている絵柄が消えかかり、生地も薄くなってきたことに気が付いたからだ。このままずっと着続けたいが、そろそろ引退の時期なのかもしれないと思い始めた。遅かれ早かれ、穴が空くことは必至だが、そうなったら、何を着ればいいのか。そう言えば、確かあそこあれがあったはず。その時突然押し入れにしまい込んだ西友の2軍のTシャツのことが頭に浮かんできた。とうとう、2軍のTシャツの出番が来たのだ。

 衣装ケースに入れて置いた西友の5枚のTシャツは、放ったらしにしておいた割には何の問題もない。プリントされた絵柄は好き好きもあるが、家でゴロゴロしたり、朝の散歩のときに着るだけだから気にしなければいい。それよりもお気に入りのTシャツがもう限界になったことで、あることに気付いてしまった。それはもう長い間、かれこれ2年半以上も外国に行っていないという紛れもない事実だ。私のお気に入りのTシャツはすべて旅行に行った先で買ってくる自分へのお土産だからだ。自由の女神が胸にプリントされたTシャツはルーブル美術館、鋭い歯がキラッと光っているサメのイラストはサンセバスティアンの水族館、人も動物も阿鼻叫喚するゲルニカのコピーはバルセロナピカソ美術館で買ったものだ。

 なぜ旅先でTシャツを買う習慣ができたかというと、定かではないが、たぶん一番役に立つからではないだろうか。家に帰ったその日から着られて、忘れら去られることがないからだ。Tシャツを眺めているだけで、旅の思い出が自然と蘇ってくる。いつも一緒に居られるお土産なんて、そう滅多にあるものではない。自分にはTシャツ、でも家族や友人にはキーホルダーやスノードームなどあくまで義理のお土産を買う。それらはお土産の定番だが、私も最初は自分用に当然のように買ってはいた。だがある時タンスの引き出しを開けたら行き場のないキーホルダーがごっそり見つかった。これをどうしようかと考えたら、やはり捨てることなどできない。役には立たないものだけれど、処分するには胸が痛い。だから、旅の記念にキーホルダーは買わないことにした。

 観光地でよく見かける地名のロゴ入りTシャツはなんだか気恥ずかしくて、買う気にはならない。それにあれを着て街を歩くには相当な勇気がいる。できればロゴがない方がよくて、さりげないデザインの方が好きだ。以前は外国の地名のロゴが入ったTシャツを堂々と着ている人を何人も見かけた。それが自分のお気に入りの街のだと、「あなたも行ってきたのですね」などと声をかけそうになったこともある。そういえば、最近ではそんな場面に遭遇することは滅多にない。いずれにせよ、そろそろどこかに行って記念のTシャツを調達すること考えなければならない。

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