高齢の叔母を心配して見に行ったら
今のコロナ禍にあっては特に高齢者の健康が心配だとメディアでもよく話題にされています。ご近所さんの中にもチワワを連れて散歩している方もいますが、たいていは家に閉じこもっておられます。それで、急にではないのですが、叔母たちのことが心配になって会いに行こうと思ったのです。新聞の記事に載っていた英国の調査会社によると、日本が通常の生活に戻れるのは来年の4月ごろだとか。何を根拠にそんなことが言えるのかと疑問に思ったら、それはワクチン接種の問題でした。日本はその点で各国より遅れを取っているからです。もちろん予測にすぎませんが、私の心は「今を大事にしなきゃ、いつ会えるかもわからない」という差し迫った思いでいっぱいになったのです。だから、すぐに列車の予約をしたのです、後悔したくないので。
電話をするといつも外出していて
泊まりに行ったのは今年７５歳になる叔母の家で、３年前に旦那さんを病気で亡くして今はひとり暮らしです。広い家に犬と一緒に自由な生活をしているのですが、最近電話をするといつも外出中なのです。たいていどこかの喫茶店や誰かの家に居たりで、どうも様子がおかしいのです。叔母は朝は植木の水やりをした後にBSで韓国ドラマを見るのが楽しみだったはずなのに、なぜ家に居ないのか。不思議でなりませんでした。それと、何かというと「同級生と一緒に居る」などと、今まで聞いたこともないことを言うのです。確かレンタルビデオ店のDVDの借り放題に入っていて、それを見るのに忙しいはずなのに。なぜやたらと外出するのか、謎でした。でも実際に行ってみたら、叔母の生活が変わったわけがわかって謎が解けたのです。
DVDレンタル店が閉店したおかげで
今まで見るのに忙しかったDVDはもう借りられなくなったのです。車で行ける範囲に３つのレンタル店があったのですが、すべて閉店したからです。さて、これからいったいどうしたらいいのか。最初は有り余る時間をどう過ごしたらいいのか、戸惑うばかりでした。そんな時、小学校の時の同級生に偶然スーパーで会ったのです。それをきっかけにして、叔母も退屈していたのでしょう、時々一緒にお茶するようになりました。元々楽天的で人付き合いが大好きなので、おしゃべりが楽しいらしいのです。それまでは兄弟や特定の友達としか付き合わなかったのに、同級生たちとも交流するようになったのです。と言っても、叔母から連絡することはなく、相手からの誘いで外に出かけるのです。でもめったに断ることはないそうです、断る理由がないので。
普通はDVDが借りられなくなったら、動画サービスを利用すればいいと誰もが思います。でも果たして、高齢者が一人でドラマや映画を一日中見続けていいものなのか、はなはだ疑問です。以前私がポケットWi-Fiでドラマを見ていたら、叔母がこう言ったのです。「あなたがそうやっているのを見ると羨ましい気もする。だけど家に閉じこもってしまいそうだから私はパソコンは要らない」と。まさにその通りなのです、人との交流よりもパソコンだなんて、人間の生活とは言えないのではと正直思ったのものです。
タクシー代わりに利用される？
叔母の生活でのもう一つの変化は、車が無ければどこにも行けない環境に大いに関係しています。都心と違って自分の行きたい所が歩いて行ける距離にないのです。免許のない高齢者だって、たまには食事や買い物に行きたいのです。お金の心配がなければタクシーを呼べばいいのですが、それが毎回だと「近所にやらしい」、つまり近所に何だかんだと言われて気まずいのです。だから、気軽に頼めて、おしゃべりを楽しめる相手を求めてやまないのです。その標的になっているのが私の叔母で、でも叔母も外食をしたくても一人では行けないのでちょうどいいのです。相手と叔母との利害が一致して、私に言わせれば、タクシー代行みたいなことをしているわけです。でもガソリン代を考えたら、とてもお茶代だけでは足が出るけどねと本音が出るのは仕方ないことです。
叔母と家で食事をしていたら、携帯が鳴りました。ひとり暮らしをしている叔母の知人からで「遊びに来ない？」とのお誘いでした。お正月に一人で寂しくて退屈しているのです、私が来るのは知っているのに電話してくるのですから。叔母は「あの人は一人だから、明日にでも行ってあげなきゃ」と心配している様子です。驚きました、１年前はこんなことはなかったのに。明らかに人とのつながりが広がっていて、相手への思いやりもあるので叔母は孤独ではないのです。「都合のいい女」と言われるかも知れないけれど、まあいいか、と開き直っているのです。
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