人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

トイレの水漏れとの闘い

上手く行かず、トイレが水浸しで慌てる

 パリでの最初のホテルが料金が高めなので、少し期待してしまったが、その淡い期待も無残に打ち砕かれた。でもあのロケーションで、あの部屋の広さはどう考えてもとても幸運なことだった。そうポズィティブに考えようとしていた矢先、トイレに入ったら、何やら異変に気づいた。それはトイレの水をためるタンクの下に水たまりを見つけたことだった。最初この水はいったいどこから来るのか、分からなかった。よく見てみると、トイレのタンクの横についているネジからポタポタと水滴が落ちていた。ネジをいじってみるが、もうこれ以上はきつく締められない感じだった。さて、どうするか、このまま放って置いたら、トイレの床は水浸しになるに決まっている。大変残念なことだが、このようなことはたいして珍しいことではない。

 実を言うと、以前にも水に関して災難に遭ったことがあった。それはパリのモンバルナス駅近くの料金が一泊2万円くらいの普通のホテルで、しかもそこは日本のツアーで来る人たちが泊まるようなホテルだった。私はその事実を朝食の時に日本人の人に声をかけられて初めて知った。水漏れに関しては、驚き慌てた私は階下にあるフロントにすっ飛んで行って、「ちょっと、部屋を見に来てください」と叫んだ。バスルームで手を洗おうとしたら、信じられないことに足に水が掛かった。つまり、配管が抜けて水がもれてしまったのだ。よく見てみると、そこはビニール紐かなんかで、とりあえずの形で結んであるだけで、いつ取れてもおかしくない状態だった。

 「ちゃんと取り付ければいいのに、なんてこと!」と歎く私に、フロントの人はこともなげに、「そう慌てずに」と意にも介さない。それどころか迷惑をかけてすまないとの謝罪の言葉もない。彼らにとってはそんなことは日常茶飯事とでも言いたいのだろう。何でもいいから早く直して欲しいとすごい剣幕の私を無視するかのように、笑顔で対処し、「大丈夫だから」と宥めにかかる。すぐに工事の人がやってきて、今度はビニール紐ではなく、ちゃんと接着剤を塗り、接合して帰って行った。これでもう手洗いの時に足に水が掛かる心配は無くなった。

 あの時に比べれば、トイレの多少の水漏れなど比較にならないが、やはり気になる。だが、わざわざフロントに言いに行く気にもなれなかった。なぜなら、あくまでもここは一泊するだけのホテルで、明日になれば出ていく身だったからで、どうでもいいことで、問題にしたくなかったからだ。それに、あの状態では、おそらく掃除の人も気づいていたはずで、直そうともしないのは、直す気がないのでは無いかと推測した。例えば、私の前にこの部屋に泊まった人がいたとしたら、その人が何か言うはずなのだが、その人も何も指摘しないで黙っていたとしたら、それはもはやそれでいいということになっているのだ。 そう考えたら、事を荒立てたくないというか、わざわざフロントに出向いて、水漏れを指摘するのがめんどくさかった。それで、自分なりに一計を講じた。まずは500mlのペットボトルで下から水を受けようとした。だが、ペットボトルは軽くてすぐに動いてしまったり、水が跳ねたりしてしまう。周りにバスタオルを敷いて置いたが位置がずれて上手く行かない。

 それで、私はペットボトルを直接ネジのすぐ下に取り付けることにした。要するに、リュックサックから爪切りを取り出して、ペットボトルの上部を切って、カップを作った。そのカップで垂れて来る水を受けようとしたのだが、取り付けるのに適当な紐がない。それでどうしたかと言うと、唯一使えるのはミシン糸で、何とも頼りないがそれを何重にも使って、一応ネジのところに取り付けて、水を受けることにした。やってみると、なかなか上手く行ったので、自画自賛した。それからは水がペットボトルに溜まったら捨てる作業を繰り返していた。部屋にあるテレビを見ながら気楽にやっていたが、ついつい居眠りをしてしまった。そうしたら、スワ、大変で、水の重みに耐え切れなくなった糸はあっけなく切れて、ペットポトルは下に落ちていた。一番恐れていた事態になっていて、トイレは水浸しになった。

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