人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

トマトの冷製スパゲティ

今週のお題「冷やし◯◯」

デニーズの夏のお勧めは、冷やしパスタ

 まだ若かった頃、友だちがファミレスのデニーズでアルバイトをしていたので、よく食べに行った。あれは暑い夏の日で、夏バテ気味で食欲のなかった私は何を食べようか迷っていた。たいしてお腹も空いていないし、デザートぐらいでいいかと思った。すると友だちが今の季節のおすすめメニューは冷製トマトスパゲティだという。ええ!?まさかの冷やしパスタ?と戸惑ったが、一応「それってどういうの?美味しいの?」と聞いてみた。その麺はスパゲッティとは違って、日本のそうめんのように細くて、絶妙な味つけのソースと相性がぴったりなのだ。彼女に言われるままに注文してみると、見かけはそうめんサラダみたいだ。実際に食べてみると、今まで食べたことがない新鮮な味で、程よく冷えているので、口当たりがとてもいい。スルスルと喉を通るが、果たしてこれは何の味?と尋ねられても即答は難しい。

 細いパスタに絡みついているソースは何とも形容しがたいが、それでもまた食べたくなる味だった。ドレッシングでこんな味があったっけと考えてみたが、すぐには思い出せない。パスタの具は確か小さく切ったトマトとツナだったと記憶しているが、ツナの苦手な私でも全然気にならなかった。冷房の効いた店内で食べる冷たいパスタに嵌った私は夏が終わるまで、デニーズに通い詰めた。パスタを食べた後は、デニーズの季節のデザートを注文した。あの頃は夏だから、ぶどうかメロンだろうか、細いグラスにタワー状態に盛られたパフェを堪能した。あの頃暑い夏を冷製パスタと豪華なパフェでなんとか乗り切ったと言っても過言ではない。

 彼女の話では、デニーズではデザートを作るのは厨房の人ではなくて彼女たちの役目なのだそうだ。つまり、お水を出したり、注文の料理を運んだり、食器を片付けたりするだけが仕事ではないのだ。もちろん入ったばかりの新米の時はそんな余裕はないが、慣れてくるとデザート作りを先輩から指導された。最初は果たして自分にできるかどうか不安だが、やってみるとグラスに決められた分量の材料を入れて行くだけだから難しくはない。ただ、問題なのは生クリームのデコレーションで、これだけは練習しなければならなかった。もっともそれはソフトクリームを作るときに経験済みだった。

 当時は彼女のデニーズでの数々の失敗談を聞いて笑い転げたものだ。新米だったころに、客席にお水を運んで行ったら、水の入ったグラスがトレーから滑り落ちてしまった。当然水はお客さんにかかってしまい、すぐに店長が飛んできた。えらい怒られるかと思ったら、意外にもお客さんは「気にしなくていいから」と言ってくれる。逆に慰められてホッとした。世の中には優しい人もいるのだと感激した。明らかに注文が間違っているのに、「これでいいから。作り直す必要ないよ」と言ってくれるのはほとんどが男性の客で世の中の厳しさを知っている人だ。一方の女性客は彼女たちのわずかなミスも見逃してはくれなかった。お手柔らかにと言いたいほどに女性は女性に対して容赦ないのだと知ってしまった。まさに”女の敵は女”と言えるような状況だった。もちろん、ミスをするのは良くないことだが、これくらいはいいではないかと思ってしまうこともあって、”おばさんは恐るべし”と震え上がった。

 冷やし○○と言うことで、懐かしい冷製パスタのことを書いてみたが、悲しいことに今ではご縁が全くない。そうめんサラダはめんつゆで作るが、それだと和風味だから、冷製パスタとは似ても似つかない。似てるものと言ったら、春雨サラダが一番近いと思うが、あれは中華風だからイメージが違う。当時の冷製パスタを再現しようとしてもソースを何にしたらいいか、途方に暮れる。一番いいのはデニーズがあのメニューを復活させてくれることだが、今のようなコロナ禍ではどうだろうか。その時はぜひ友達と一緒に食べに行きたい。

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