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『三つ編み』が教えてくれた驚愕の差別

お題「#買って良かった2020

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レティシア・コロンバニの『三つ編み』の表紙と裏表紙。フランスで120万部のベストセラーになった小説。発刊前から話題を呼び、数々の賞に輝いて、すぐに32か国言語に翻訳されることが決まったという。

『三つ編み』は差別の告発本

 私が今年買ってよかったと思うもの、それは書籍で、フランス人女性が書いた『三つ編み』という本です。これはただの小説ではなくて、世界には信じられないような差別が存在していることを世に知らしめる告発本でもあるのです。ここでの世界はインドで、カースト制度の外?にある身分の人たちの実態が描かれているのです。ダリットと呼ばれる人々は不可触民と言われて、人間以下の扱いに甘んじているのです。バラモンに逆らえば、待っているのは死のみで、それでも断固としてNO!と運命に抗おうとした女性の物語でもあります。殺されるだけならまだいいのです、その死もただ殺されるわけではなく、公衆の面前で辱めを受けるという、人間の尊厳を踏みにじったやり方で。だから余計に人々に恐怖心を植え付けるのです。だが、負の連鎖を断ち切るためにもやるしかないと女性は決心するのです、村からの逃亡を。何が彼女をそこまで突き動かしたのか?その原動力となったのは、6歳になる娘で、「彼女には絶対自分のような惨めな思いはさせないぞ」という強い意志が行動を起こさせたのです。でも、彼女の住む世界では、こんな考えはとても正気ではない、頭がおかしくなったとしか思われないのです。

三つ編みから連想するものはかつら?

 実はこの本を書店で何気なく手にした時は「これは3人の女性の物語」と帯に書いてあったので、「ふ~ん」とただ思っただけでした。インド、イタリア、カナダと遠く離れた場所に住む彼女たちが何かでつながっているらしい、それが何か知りたいとは一瞬思いました。でも本を買いたい、この本がどうしても欲しいという気持ちにまではなりません。『三つ編み』というタイトルからすぐに思い浮かぶのは髪の毛です。でも髪の毛が3か国の異なる生活をしている女性たちとどうやって結びつくのか、想像力が欠如している私の頭ではお手上げです。勘の鋭い方なら、「もしかしたら、それはかつらなのでは?」と気づくはずです。

 インドの女性たちには髪を切る習慣が無いらしく、一生髪の毛を切らない人までいるのです。逃げ延びてたどり着いた聖地である寺院で、『三つ編み』のスミタとその娘は崇拝するヴィシヌ神に自らの髪を捧げます。お金がある人はお金を、では何もない大勢の人たちは何を神に差し上げればいいのか。それは自ら持っている宝物、つまり髪の毛に他なりません。聞くところによると、寺院には毎日のように何万にも及ぶ人々が訪れて剃髪すると言います。彼らの溢れんばかりの髪の毛はどうなるのか、それらをゴミとして捨ててしまうのはもったいない。海を越えて運ばれて、誰かの役に立っているかもしれない。そう考えると、自ずとストーリーは出来上がってしまうのでは・・・。

買うきっかけは新聞の小さな記事

 再度、この本を手に取るきっかけとなったのは日本経済新聞の夕刊の記事です。この本の著者は女優、脚本家、映画監督として経験を積んだ女性で、『三つ編み』は驚くべきことに初めて書いた小説だそうです。その中で印象的だったコメントは「私の小説が時代遅れになるのが夢。こんな差別、いつの話?って」。その発言で、私の好奇心は大いに刺激されて、本屋に駆け込んで迷わずレジに持って行きました。それにしても、人間が宇宙に行く現代において、インドでは、素手で人の汚物を集めて回る人達がいる、そんな事実を前にしたら椅子からひっくり返りそうになりました。こんな驚愕の差別があることを知って、頭の中が真っ白になってしまったのです。

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