人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

本の価格の上昇と読み手の戦略

f:id:mikonacolon:20210206211224j:plain

本の値段が高くなった訳とは

 作家の堂場瞬一さんは毎週月曜日に日経新聞にエッセイを連載しています。警察小説の名手で知られる堂場さんは最近の本の価格の上昇を嘆いているのです。信じられないことに、文庫本でも千円、単行本なら1500円以上はざらにあります。さらに消費税というものがあるので、びっくりするほどの値段になってしまうのです。例えば、最近買った蝉谷めぐ美さんの『化け物心中』は定価は1650円ですが、レジでの支払いは1800円を超えてしまいます。スウェーデン発のベストセラーであるペール・アンデションの『旅の効用』は2200円なのでさらに価格は跳ね上がります。

 でも、小説の書き手である堂場さんにとってはあまり関係ないことなのでは、と思ったのですが。何が言いたいかと言うと、つまりこれ以上本の価格が上がったら、わざわざ買ってまで読もうとする読者はいなくなるのではと危惧しているのです。そもそもどうしてこんなに本の価格が上昇したのか、その原因は本が売れなくなったことです。だから出版社は少ない部数で利益を出すことを考えなければならないそうなのです。それで自然と本の値段を吊り上げることになったのです。

 紙の本が売れなくなったと言われます。では電子書籍というものなら高くても売れる世の中なのでしょうか。紙の新聞が売れなくなって、みんながデジタルの新聞を支持するように、本もデジタルなら売れるのでしょうか。もっとも堂場さんの小説が好きな読者は本が高くなったとしても、新刊が出たと聞けば本屋に走っていくはずなのですが。それに本の値段が上がるのですから、懐に入る印税も以前とたいして変わらなくなるはずです。第三者から見れば、何の心配もいらないのではと考えてしまうのですが、これは当事者しかわからない微妙な問題なのかもしれません。

読み手はどう本を選んだらいいのか

 昔は新聞で新刊本の宣伝文句を見て、面白そうだと思うとすぐに近所の書店に注文しに行ったものです。月に2万円ほど買っていたのですが、失敗も多かったのです。当たり前です、その本の内容も把握せずにインスピレーションと自分の勝手な思い込みだけで選んでいたわけですから。その失敗から少しは学ばなければと思っていたら、都心に大型書店ができて、なんと座って本を選ぶことができることを知ったのです。幸運なことに、検索するとお目当ての本はちゃんとありました。だから、自分の思い込みと実際の本の内容が一致しているのかどうか確かめることができるようになりました。

 そして、本を選ぶ指南役として、新聞に載っている書評や『目利きが選んだ今週の一冊』、『読書日記』等の識者のアドバイスに頼るようになったのです。そのほかには、今話題の本の著者へのインタビューで本に込めた思いを率直に語っているのを読んで、その熱い思いに感動して、好きなジャンルではないけれど買ってしまうこともあるのです。例えば、フランスでベストセラーになったという『三つ編み』は本屋で少しばかり立ち読みしただけでは、著者が言いたかったことの半分も理解することはできません。正直言って、あの小さな新聞記事に目を留めることがなければ、インドにおける非人間的な差別を知ることもなかったのですから。その点において、「うそでしょう?ありえない!」と時代錯誤としか思えない現実を突き付けられて、眩暈さえしたのです。思いもよらなかった本との出会いは私の心に希望の光と潤いを与えてくれました。

mikonacolon