人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

サラゴサでトラブル

AVEに乗り換えたものの、自分の座席まで行けない

 サンセバスティアンからアルヴィア(列車の名前)に4時間ほど乗り、サラゴサに着いた。そこからはAVEに乗り換えて、1時間15分でマドリードに着く予定だった。思えば、5年前に初めて、AVEに乗ったときは、何処までも続く長い通路を走らされた。それほど、AVEの乗り場は遠かった記憶がある。あの時の嫌あ~な思い出が、急に押し寄せて来て冷や汗が出た。それに、誰かに聞こうにも、誰も周りにはいやしなかった。見知らぬ駅がなんとも殺風景で、やけにだだ広く見えて、私の中の不安が余計に加速した。ただ、乗り換えまでの時間が1時間半あるのだけが何よりの幸運だった。今回もそんな不安を抱えながら、サラゴサに着いて、列車を降りた。ホームから出るために上階に行くエスカレーター乗る。すると、上では踊り場の両脇に係員が立っていて、「これはいったい何事?」と驚かずにはいられない。5年前にはなかったことで、私にとっては嬉しい驚きだった。それなら、それで好都合と、早速AVEの乗り場を聞いてみた。

 今回は”付いている”と調子に乗っていたら、教えて貰った場所に行ったにも関わらず乗り場が見当たらない。「AVE」の表示も何もないので、わからない。仕方がない。近くにチケット売り場のようなオフィスがあったので、そこで聞いてみると、隣の改札を指さし、あそこだと言われる。頭上に目をやると、列車の発着を表示したパネルがあった。どうやら、この改札はAVE専用ではなく、その他の列車にも利用されているらしい。ここもパリのモンパルナス駅と同様に、発車時間間際にならないとホームに入れないシステムになっていた。しばらく待っていると、ようやく改札を通ることができたが、そこでもまた行列を作って待たされた。結局、ホームに行けたのは発車時刻の5分前で、私のAVEの席は4号車だったが、ホームのどこで待っていればいいのかもわからないのに、列車が到着した。自分が乗る車両を探そうにも探す時間がない。こうなったら、何処でもいいからとりあえず乗ればなんとかなる、それが私の頭の中の思考だった。もちろん自分が乗った車両が何号車かは乗った後に気づいたのだが、「何とかなる」と思ったのは大きな間違いで、「移動すればいいだけのこと」では済まなかった。要するに、その時のAVEは車両が連結しているタイプの列車で、移動したくても出来なかったからだ。

 こうなったら、万事休すだった。自分の席には行けないので、列車の出入り口近くで立っているしかないかと諦めた。すると、そこへ制服を着た男性が現れて、チケットを見せるように言われる。その人は”路頭に迷っている乗客”つまり、わたしのこと、を見つけると、手に持っていた用紙を見ながら、何かボールペンで書きこんでいる様子。それから、私について来るように言うと、車内に入っていき、パソコンで何やら作業をしている男性の隣りの席を指さす。どうやら、その席に座れと言うことらしい。その証拠に、その男性は慌てて、隣の席に置いてあったコートや荷物を片付け始めた。

 なんだか何も悩む暇もなく、あれよあれよという間に席に座れてしまった。これを幸運と言わずしてなんと表現したらいいのだろう。まさに不幸中の幸いとしか言えない。こうなったのは、きっと発車間際に私が列車の入口から顔を出して、ホームを移動しようかどうか迷っているのを係員が見かけたからに違いない。車内をよく見てみると、普通の車両と比べて、狭い空間なのに、席はゆったりしている。とても落ち着いた空間で、こんな席もあったのだと新発見を楽しんでいたら、扉に「リラックスルーム」と書かれていた。いやはや納得だ、この空間はその名にふさわしい。元々の私の席は格安の2等席なのに、トラブルのせいで、なんとバァージョンアップしてしまったらしい。なんて愉快なのだろう。

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