人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

スマホでもわからないの?

なぜ、スマホ片手に私にホテルの場所を聞くの?

 先日、所用があって、都心の高層ビルに行ったついでに、西友で買い物をしようと通りを歩いていた。すると、向こうから歩いてきた若い女性からすれ違いざまに「プリンスホテルはどこでしょうか」と声をかけられた。ええ~!プリンスホテル?だなんて、そんなの分かるわけがない。申し訳なくて、まずは謝ることにした。「すみません、分からないんです。ごめんなさい」と答えた。でも、たしかその人はスマホをちゃんと持っていたはずだ。後から考えてみたら「スマホ片手に、私にホテルの場所を聞く?」と訝しく思った。今のご時世では、スマホは万能で、何でも分からないことは聞けば教えてくれるとばかり思っていたが、そういうわけでもないのだろうか。

 そう言えば、以前高層ビルのあたりをウロウロしていたら、「プリンスホテル」と書かれた入口を発見したことがあった。「ああ、ここがプリンホテルなのか」と少し戸惑ったが、よく考えたら、あれは高層ビルの一角だった可能性が高い。それで、女性の後姿を目で追いながら、近くに交番があったことを思い出し、その後を追いかけて教えてあげようかとチラッと思った。だが、私は余計なお世話か、と躊躇してしまった。

 家に帰ってからも気になったので、ネットで検索したら、やはり、ホテルはあの高層ビルに隣接していると書いてあった。「隣接している」と言っても、もはや高層ビルの一部と言っても差し支えない。なのに、サイトの説明では初めて訪ねる人のためにわかりやすい説明はひとことも書いていない。せめて、詳しい案内図ぐらいは載せられないものなのだろうか。それとも、ホテルを探しあてるのは自己責任とでも言いたいのだろうか。

 私も昔、高層ビルのホテルの入口が探せなくて、ベルリンで立ち往生したことがある。ベルリンのアレクサンダープラッツにあるパークインホテルは、空港からのバスが発着する停留所のすぐ後ろに位置している便利なホテルだった。目の前にはベルリンタワーがあり、絶対迷わない場所だと疑いもしなかった。だが、実際に行って見ると、確かに自分が予約したホテルはすぐそこにあるのだが、残念なことにホテルの入口がどこだかわからない。高層ビルの一階はまるでショッピングセンターのようになっていて、飲食店や花屋、ゲームセンター、カフェが立ち並んでいた。それなのに、ホテルの入口の表示が全くなく、夕方にバスを降りた私は薄暗闇の中、必死になって入口を探した。

 途方に暮れて、諦めかけた頃、ようやく「パークインホテル」と書かれた小さな入口があるのを発見した。中に入り、どんどん進んでいくと、そこにはホテㇽのフロントに行くエレベーターがあったので、ホッとひと安心。もっと簡単に見つかると考えていたのに予想外に難しかった。まあ、自力でホテルにたどり着くのはそんなものだと、今ならわかる。考えてみると、昔は貧乏旅行だったから、(と言っても、今も貧乏には違いないが)タクシーは高いから、使わないで、自力でたどり着くのをモットーとしていた。正直に言うと、外国のタクシーはなんだか怖くて乗れないのが本音だった。

 だが、夜遅く空港からホテルまで移動するのに、どうしてもタクシーを使わざるを得なくなったことがあった。一番最初に利用したのはスパインのバルセロナで、空港から市内のホテルまで乗った。それ以来、タクシーに対するわだかまりは嘘のように無くなり、できる事なら大いに利用したいと思っている。料金も普通のタクシーなら良心的な値段で利用できるので、とても便利で、疲れなくていい。それに、貴重な時間の節約にもなるが、その代わり、自分の足で歩いていないので、道がわからないのが少し困る。ただ、タクシーに乗れない場合のことも考えておかなければならないのは言うまでもない。そうなったら、その先を考えるとなんだか面倒臭くなるが、それが嫌なら、旅行に行かなければいいだけのことだ。実を言うと、旅から帰ってひと月ほど経った私は、今でもまだ旅行気分に浸っている。

 とても満ち足りているので、またどこかへ行きたいだなんて、とても思えない。でも、そんな気分は長くは続かないので、電池の充電が切れるように、不機嫌になるにきまっている。そうなったら、またどこかへ行きたくなるのだ。

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