人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

500円玉貯金

同じお金なのに心の持ちようが違う

 最近私はいつもある音楽を聴いている。それは軽快なテンポでノリがよくて、私をいい気持ちにさせてくれる。以前見に行ったとブログに既述した映画『コンパートメント№6』の冒頭に流れるテーマ曲だ。その曲が耳に残って忘れられなかったので、どんな題名で、どこの誰が歌っているのか知りたくなって、ネットで検索してみた。だがカンヌで第二席を取った映画だとの情報しか得られない。それでふと思い出した。以前サイエンスライター竹内薫さんが、「日本語で検索してヒットしなかったことも英語で試してみたら信じられないほど情報が得られた」と書いていたことを。竹内さんは日経の夕刊の『目利きが選ぶ今週の一冊』に毎週書評を書いている。

 その竹内さんのアドバイスに従って、試しに映画の原題である” hitti  nro6  "で検索すると、日本語のときとは比べ物にならないほどたくさんの情報が出て来た。中でも特筆すべきは動画の種類の豊富なことで、日本語ではYouTubeの映画の予告ぐらいのものだが、カンヌでのインタビューや記念撮影の様子などが見られて楽しい。監督や主役の二人の様子はもちろんだが、私が仰天したのは主役の二人が記者の要望に応えて、リョーハを演じた俳優がラウラ役の女優を抱き上げたときのことだ。男性が女性を抱き上げて撮影するのは普通だが、その逆はあり得ないと思っていた。ところがである、ところが、その後思ってもみなかったことだが、女優が男優を軽々と!?持ち上げて抱きかかえたのである。そのパフォーマンスを二人は笑いながら繰り返したので、見ているこちらもなんだか楽しくなった。

 それは会場の外での動画だが監督や主役の俳優たちがレッドカーペットを歩く場面や会場に入って観客に拍手で迎えられる場面などを見ていたらあっという間に時間が経った。もっと見ていたかったが、切りがないので慌ててサイトを閉じた。結局、映画の音楽に関しての情報は何一つ得られなかった。それで、いつでも聞けるようにと、映画の予告をICレコーダーに録音した。曲を聞くたびに1週間ほど前に見た映画をいつでも追体験することができている。あのポップな音楽が私の旅心を憎いまでに刺激してくるので、旅に出たい気持ちを抑えられなくなってしまうのだ。

 前置きはだいぶ長くなったが、500円玉貯金のことを書こうと思う。昨日、歯医者に行って、帰りに近くの書店に行ったら、”どうせここにはないだろう”と思っていた本に出会った。いつも行っているので韓国の本がある棚は”そこ”だとわかっていた。それは『破果』(はか)というタイトルの本で,65歳の女殺し屋の物語だった。今まで高齢者の女殺し屋だなんて、聞いたこともなかったから、余計に興味をそそられた。大型書店にも行って見たが、残念ながらあるべき棚にそれはなかった。そうなると、是が非でも買わなければならない。本の値段は2700円、翻訳本だから一般書よりは少々高いが、そんなことは言ってはいられない。消費税を入れたら3千円出して、30円のお釣りが来た。

 そのお金をどこから出したかと言うと、いつもの財布ではなく、500円玉を何個か入れて持ち歩いているビニールの透明なポーチからである。いつでも欲しい本を買えるように普段から500円玉を貯めている。元々は原田ひ香さんの『三千円の使い方』に触発されて、一日に100円貯め始めたのだが、折も折硬貨の両替に手数料がかかるようになった。それで急遽100円ではなく500円玉を貯めることにした。さすがに毎日とはいかないが、買い物で500円玉のお釣りをもらった時はラッキーと有難く貯金箱に入れていた。となると自然と500円玉は溜まっていく。

 私の場合はこれをそのまま貯めるのではなく、使う目的で貯めている。要するに書籍を買うお金で、毎月のNHKのラジオテキストや欲しい本を買うための特別なお金だ。元はと言えば500円玉を入れているポーチは海外旅行の時に小銭を入れるために買ったものだが、コロナ禍で出番がなくなったため仕方なく使っている。だが、中身の500円玉は大いに役立ってくれている。なぜなら給料日前でも躊躇なく本が買えるからだ。思ってもみなかったことだが、出所は同じお金だが、使う時の心の持ちようが全く違う。心に余裕があると言うか、(とは言っても私の懐が温かいと言うわけではないが)心の平安が保てるし、お金がないという恐怖に怯えなくて済んでいる。

mikonacolon