人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

外国で暮らしたい

今週のお題「住みたい場所」

f:id:mikonacolon:20210706204607j:plain

漠然と思うだけでなく実現させてしまう人もいて

 外国で暮らしてみたい、そう漠然と思うことは誰にでもあります。でも実現させてしまう人はあまりいません。それはその思いがたいして強くなくて、情熱が長続きしないからなのです。本気で取り組まないと、夢はただの夢、机上の空論で終わってしまいます。もう何年も前、海外旅行に行き始めた頃、旅行の下調べをしようと大型書店に行きました。家の近くにある本屋では本の種類が少なすぎて、情報が得られないので行きたい場所がわからないからです。旅行雑誌に特集されているのは有名な観光地で、あとはショッピングを楽しむというのがお決まりでした。その時はイタリアに行きたかったのですが、ツアーで行くような場所が本当に自分にとって面白い場所なのか疑問にも思っていたのです。ガイドブックを2~3冊あれこれと見てみましたが、やはり行きたい場所が見つかりません。それで、参考にしたのがガイドブックの隣に並んでいた一般の人が書いた旅行記でした。当時は今と違って専門のライターの執筆ではない旅行記がたくさんありました。読んでみると、何処かに行って何を食べたとかのたわいもない話や思わずやらかしてしまった失敗談などが書かれてありました。

 そんな旅行記の中で一線を画していたのは、もう名前は忘れてしまいましたが、ある熟年夫婦の旅行記でした。その方たちはイタリアの田舎に移り住もうとしていたのです。手筈が整っているのだとばかり思って、現地に来てみたら住むことになっていた家がまだ準備ができていないとわかったのです。住めるようになるまであと3週間かかると言われて途方にくれました。それで頭を切り替えて、この機会にイタリア旅行をしようと決めました。家を待つ間どうせホテルに泊らなければならないのなら、旅行をして楽しもうと思ったのです。イタリアに住むことは、この夫妻の夫にとって長年の夢でした。仕事の関係で何度もイタリアに出張して、かの地に魅せられた彼は当時からいずれは住みたいという夢を描いていました。短い間ですが支社で働いたこともあり、言葉も何とかできて、現地の事情にもだんだんと詳しくなりました。

 当時から少しずつ準備をしていたので、移住について迷いはありませんでした。日本で住んでいた家を売り、そのお金でイタリアに家を買いました。第三者にとって勇気ある決断のように見えても、彼は真剣で夢の続きを見ているだけなのです。そんな人が書いた旅行記が面白くない訳がありません。今でこそ、やっとガイドブックに載っている避暑地モンテ・ロッソ・アルマーレをいち早く知ることができたのもこの本のおかげです。この青い空と青い海の境界線がわからなくなるくらいの天国のような場所は、ヨーロッパでは有名な避暑地でした。でも日本では無名で実際に行ってみたら、日本人に会うことはありませんでした。フィレンツェ中央駅から列車に乗り、ジェノバで降りて、乗り換えてラスペッツアに行きます。そこからは、各駅停車の列車が海岸線ぎりぎりのところを通っていくので、まるで海の中を行くような新鮮な気持ちを味合えます。沈んでいく夕陽を見ながら海岸に佇んでいたら、どこからか一人の女性がやってきました。たぶんその人は仕事帰りなのだと思うのですが、着ていたワンピースを脱ぎ始めたのです。あっけに取られていたら、下にはちゃんと水着を着ていてすぐに海の方に走っていきました。ふと目をやるとそこには彼女が気持ちよさそうに泳ぐ姿がありました。

 夫妻はローマを出発し、フィレンツェ、ミラノと旅をするのですが、旅の終わりに夫は妻にある質問をします。「今まで行った中でどこが一番よかった?もう一度行きたい場所は?」「ローマもフィレンツェも素晴らしかった。でも一番心に残ったのはモンテロッソアルマーレとアオスタなの」と妻は即答しました。旧所名跡で有名な場所よりも自分が一番心地いいと思った場所を妻は素直に選んだのでした。妻のこの発言に背中を押された私は迷うことなく、モンテロッソとアオスタに行こうと決めました。でも当時は情報が少ないので、イタリア政府観光局からパンフレットを送って貰ったり、現地の観光案内所に手紙を書いたりしました。その結果、今でも心に残る旅行ができたので、夫妻の旅行記は私にとって旅の羅針盤のような役目をしてくれたのです。

mikonacolon