人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

旅先のホテルでのバスタイム

今週のお題「お風呂での過ごし方」

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▲フランスのシャルトル大聖堂のステンドグラス。NHKまいにちフランス語テキストから。

旅行気分で盛り上がるが、バスタブは取扱注意

 外国のホテルでお風呂に入るということは、シャワーを浴びることだとはわかっています。でも頭でわかっていても、やはりシャワーで身体を洗って終わりだなんて、実に味気ないと正直思っていたのです。それにシャワーを浴びる時間は短すぎて、気持ちいい瞬間はすぐに終わってしまうではありませんか。だから、ホテルを決める時はできるだけバスタブのあるところにします。しかし、そのバスタブも悲しいかな、日本のお風呂のようにはいかないのです。

 私の初めての海外旅行はイタリアで、最初に泊まったのはローマのホテルでした。ローマのテルミネ駅に降り立った時、出口には大勢の人達が旅行者を待ち受けていました。「welcome!ようこそ!」と書かれたボードを持った出迎えの人たち。なるほど、彼らが1万ほどの手数料を払えば心強いサービスを提供してくれるのだと知りました。初めての人にお勧めのサービスだとガイドブックに載っていましたが、こちらはなんせ貧乏旅行者なので、節約のため何とか自力で乗り切るしかありません。しかし、ものすごい数の客引きをするタクシー運転手の迫力に圧倒され、少し後悔したのも確かでした。

 駅の出口まで全力で走って彼らから逃げて、駅の外に出たらホッとしました。でもホッとしている場合ではありません。もう夜の7時なので辺りは薄暗くなっています。早くホテルを見つけなきゃと焦って捜していると、幸運にも自力でたどり着けました。そのホテルは自分で好きなところを選んだわけではないのです。日本の旅行社で決められたいくつかのホテルから適当に選んで、クーポンを買って来ただけなのです。だからどんな部屋なのかも詳しくはわかりませんでした。部屋にはテレビも冷蔵庫もエアコンもありませんでしたが、バスルームだけは広々としていました。当然、シャワーだけでなく、バスタブもありました。「バスタブがあるじゃない!」と大喜びしました。

 シャワーだけでは疲れは取れやしないと思った私は、バスタブに浸かることにしました。今ならわかるのですが、人は湯船に浸からなくても、暖かいお湯のシャワーを浴びるだけで満たされるのです。数分間でも暖かさに触れるだけで、嘘のように重苦しい疲れから解放されます。歩き回ったあげく、腫れあがって痛くなってしまった足も例外ではありません。シャワーを浴びながら、両手で揉むと回復して元気に歩けるようになるのですから不思議です。これからどうしようかと落胆していたのに、すぐにパアッと気持ちが明るくなりました。暖かいお湯は旅の疲れを取ってくれるものなのだと実感したのです。

 さて、私はバスタブで湯船に浸かろうと、お湯をため始めたのですが、半分ほどでやめておきました。なぜなら日本と違って浴室には排水溝がないので、水浸しになってしまう恐れがあるからです。もしもやらかしてしまったら、大事件になってしまいます。いくら私がトラブルメーカーでも、それだけは避けたいと本気で思ったんです。バスタブは人が足を伸ばして寝られるくらいの大きさでした。それで面白がって寝ようとしたら浴槽に頭をぶつけそうになりました。慌てて起き上がろうとしたら、何たることか浴槽がツルツルしていて転びそうになり、必死で浴槽のへりにしがみつきました。何かの拍子にお湯の出る蛇口に触れてしまって、手首を火傷しそうになったこともあります。

 よく映画に美女が泡風呂に入っているシーンがありますが、あれを一度やってみたいと思っていたのです。それでバスルームに置いてあるボディシャンプーをお湯に入れてアワアワにしてみたんです。雰囲気だけは味わったのですが、実際には浴槽がタダでさえ滑りやすいのに、それに輪をかけて滑るわ、滑るわ、立ち上がるのに苦労しました。そんな訳で泡風呂での幸せはまさに泡と消えたのでした。それ以来、バスタブに入るときは、お行儀よくただ座ってじっとしているしかなくなったのでした。冒険をしてケガをするより、無事でいるために大人しくしている方がましです。だから、外国のホテルのバスタブはあまり好きではありません。私にとっては「バスタブは取扱注意」なのですから。

  外国に行くと、日本のお風呂が恋しくなりますが、そこは”郷に入らば郷に従え”です。今の私はバスタブに浸かるよりはシャワーを数分間浴びる方が幸せを感じます。それもぬるめのよりも、熱めのシャワーを全身に浴びるとき、その日の疲れも流れていくように感じるのです。

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