人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

機内映画での発見

たいして期待しなかったのに、やっぱり見ていた

 最後に機内映画を見たのは、コロナが流行る4年前だった。当時フィンランド航空に乗ったら、以前よりも日本語字幕の作品が少なくてがっかりした、というより物凄くショックを受けてしまった。なぜなら、搭乗したらすぐに液晶パネルのスイッチを入れ、到着までの9時間の間ずうっと映画を見続けるのを何より楽しみにしていたからだ。機内映画のほとんどは英語で、聞き取りが満足にできない私にとっては面白くも何ともない。日本語字幕の作品も少ないながらもあるにはあるが、「コトー診療所」か漫画の「コナン」くらいだった。あとは、インド映画か中国映画で、字幕が英語であれば、なんとかあらすじを追うことができた。

 そのせいで、今回は機内映画に頼らずにどうやってフライトの13時間あまりを過ごそうかと、無い頭を悩ませていた。本来は飛行時間は9時間だが、ロシアの上空を飛べないので、回り道をしてアジアのルートを飛んでいた。なるべく退屈しないように、面白そうな小説も買って持って行った。どうせなら、機内でフランス語やスペイン語の勉強でもしたら、有効に時間を使えるのではないかとも思ったが、そううまく行くはずもない。真剣に分厚い辞書を持ち込もうとも考えたが、荷物になるのですごすごと諦めた。それに、今回のフライトは経験したことがない夜のフライトで、いつも布団で眠っている時間を機内で過ごすことになる。夜の10時頃(それはいつも布団で眠りにつく時間で)搭乗し、現地のヘルシンキにはお昼ごろ着く予定だ。

 そうなると、否が応でも眠くなる。眠くなるが、いかんせん、座ったままでは眠れないのだ、眠ろうと努力はしても。それでどうせならと、気を紛らわせようと、スリープモードになっていた液晶パネルのスイッチを入れた。機内は真っ暗で、トイレに行く振りをして様子を窺うと、皆目を閉じてじっとしてはいるが、寝ているわけでもないようだった。眠れないせいだろうか、私と同様に映画を見ている人が、あちこちにいるのがわかった。ただじっとしているのも退屈するので、映画でも見ようかとなるのは自然なことだ。今回とても心に残ったのは、「CONTINENT」というアフガニスタンを舞台にしたタリバンとの闘争を描いた作品だった。これは珍しく日本語の吹き替えで、最初は声優のセリフがあっていないように感じたが、物語に引き込まれているうちに違和感は無くなった。タリバン撲滅の指令を受けたマッキンリー軍曹と現地の通訳モハメドとの友情を描いていて、とにかくモハメドの軍曹に対する献身が凄い。眠い目をこすりながらとうとう最後まで見てしまった。

 それから、英語字幕で見た「PAST LIVES」という映画は、どうやら現在、話題の映画らしいと知った。それは、スペインのマドリードに行った時、街角にあるバス停でその映画の看板を見かけたからだ。恋愛映画、いや、というよりかけがえのないノスタルジーをひしひしと感じてしまう、味わい深い大人の映画だと言える。カナダ移民になったノラという韓国出身の女性と韓国人男性ヘソンとの24年にも及ぶ物語で、長距離恋愛がいかに難しいかを思い知った。お互い求めあっているのに、韓国とニューヨークという距離が二人を引き裂く。毎日のようにテレビ電話でおしゃべりして、楽しいのに、それだけじゃ足りないのだ。10代の時、彼らはいつも一緒で相思相愛だった。彼らの過去の映像を見ると、自然と切なくなる。なぜなら、現在のノラは別の男性と結婚し、今でもヘソンは独身で韓国に暮らしているからだ。その二人が24年ぶりにリアルで再会する。もっと早くヘソンがニューヨークに会いに来ていたら、ひょっとして二人は結ばれていただろうか。ノラが言った「私はもう10代の少女ではないのよ」という言葉がとても意味深い。

 いずれにせよ、今回の旅の最大の発見は、機内映画は英語字幕でも十分に楽しめると言うことだ。先のことは分からないが、これでまた英語を勉強する楽しみが倍増した。

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