人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

怒りが爆発した日

今週のお題「爆発」

f:id:mikonacolon:20210904065031j:plain

バルセロナサグラダファミリア聖堂の主身廊天井。NHKまいにちスペイン語テキストから。

子供のたわいない一言でも溜まると怒りに変って

 子供の頃、休みの日になると嫁に行っている姉が遊びに来ていました。姉は自営業の人と結婚し、いつも会社のトラックで子供を二人連れてきていました。子供たちは保育園に通っていて、かわいい盛りなので父も兄弟たちも歓迎していました。でも彼女たちはいつも機嫌が悪くて「こんなところは嫌」だの「早く帰りたい」などと言って周りの大人を困らせていたのでした。それでも大人たちは少しでも長くいて欲しいと思っていたのでしょう、好きな食べ物を与えたり、おもちゃを買ってあげたりして機嫌を取っていたのです。つまり、大人としては「たかがこどもの言っていることなのだから」とじっと我慢していたわけです。私も同様に我慢していたのですが、姉の子供たちが言っている「おじさんの家なら○○ちゃん(姉の旦那さんの兄の娘)がいるのに…。おじさんの家に行きたい!」という言葉にイラついていたのでした。

 その日私は普段と違って虫の居所が悪かったのか、いつもは相手にもしないのに頭の中を「早く帰りたい」という言葉がぐるぐる回ってしまったのです。そしたら、溜まっていた怒りが堰を切って押し出されるように、「そんなに嫌なら家にもう来ないで!」と幼い子供に向かって叫んでしまいました。すごい剣幕で怒鳴られた子供たちはワァ~ンと泣き叫び姉の方へ走っていきました。その場は一瞬凍り付き、誰も何もいいませんでした。私だけがもうどうにもならない気持ちを、溜まっていた怒りをぶちまけていたのです。「もう、いい加減にして。早く帰りたいだなんて言葉はもう聞きたくない!」。

 その頃の私は自分の感情の赴くままに叫んでしまったのですが、その時の姉の態度には仰天しました。なんと姉は妹の私に「なんてこと言うの?」と怒るどころか、涙をポロポロ流してこういったのです、「私のしつけが悪いの。だから子供がそんなことを言うんだわ」。あろうことか姉は私のやってしまったことに腹を立てるのではなく、原因は自分にあると思って自分を責めているのでした。考えてみれば、子供は正直で好き嫌いをはっきり口に出します。家に連れてくるときは「来たくなかった」とか「早く帰りたい」とか言わないように言い聞かせているはずです。それでも子供は嫌なものは嫌なのです。子供も少しくらいは我慢しているのでしょうが、やはり本音が出てしまうのは子供だからなのです。

 その場に座り込みうつむいたまま泣いている姉に義兄が「もう帰ろう」と静かな声で言うと姉は立ち上がりました。泣きはらした目をした姉は何も言わずに帰って行きました。一方の私はと言うと、こんな結末になるとは夢にも思わず衝撃を受けました。風船が爆発するように、張り詰めていたものがなくなると思ったら、逆になんだか後味が悪い結末になってしまいました。それからどうなったのかと言うと、記憶が不鮮明なのですが、しばらく経つと姉はまた子供を連れて遊びに来るようになったのです。もちろん子供はもう「早く帰りたい」とは言いませんでした。どうやらあの時の姉はあの事件を重く受け止め過ぎていたのでしょう。家に帰ってよく考えてみたら、妹の戯言で気にすることもないと思ったのです。

 でも、あれから旦那さんのお兄さんとは仲が悪くなってしまったようなのです。不思議なことにもう一言も話題にはしないのでした。あんなに仲良くしていたお兄さんとなぜ絶交してしまったのか、どうやら義父が亡くなって相続のことでもめたのが原因のようです。姉は「あんな人だとは思わなかった。だからうちの人ももう付き合うのはやめにすると言ってるの」と怒ったような口調で話していました。お金の切れ目は縁の切れ目とよく言いますが、お金を目にしたらその人の本性が見えたのでしょうか。今までの信頼が一瞬で吹き飛んで粉々になってしまったのです。

mikonacolon