人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

車の中で叔母の怒りが爆発

今週のお題「爆発」

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マドリードにあるアルムデーナ大聖堂地下礼拝堂。NHKまいにちスペイン語テキストから。

いつも冷静な叔母が息子を車の外に出して

 子供の頃よく叔母の家に遊びに行っていとこたちと過ごしていました。その日も叔母は私を家まで送ってくれようとして車を飛ばしていました。いつもなら助手席に私一人だけなのに、その日はいとこたちもついてきたのです。彼らは小学6年生の姉のサラと年子で弟のユウキの仲のいい姉弟でした。約1時間ほどのドライブは冗談を言い合ったりして楽しい時間になるはずでした。ところがこの日のユウキはやたらに悪ふざけをするのでした。姉のサラをくすぐったりして彼女が嫌がるのが面白いらしいのです。

 サラが「やめてよ」と嫌がってユウキを遮っても彼は何度も同じことを繰り返しました。私も内心煩くてたまらなかったのですが、姉弟の喧嘩はよくある事と気にしませんでした。すると堪らず叔母が「ユウキ、やめなさい」と怒りました。それでもユウキはいたずらっぽく笑うだけで一向にサラヘのいたずらをやめませんでした。すると突然、叔母が車を停めて、「ユウキ、外にでなさい」と言いました。ユウキが平気な顔をして黙ったままでいると無理矢理彼を車から出して、「少し反省しなさい」とドアを閉めてしまったのです。ふと見ると、ユウキは半分泣きそうになっています。大変なことになってしまったと内心思っていたら、あろうことか、叔母は車をゆっくりと発進させたのです。もちろん、ユウキの様子を見ながらハンドルを握っているのがわかりました。

 叔母はきっとユウキが車を一目散に追いかけて来るものとばかり思っていたのでしょう。でもユウキはその場から動こうとせず、車が自分から去っていくのを見送るだけでした。子供が追いかけて来ないとわかると叔母は慌てふためきました。すぐにユウキが突っ立たままになっている場所まで引き返しました。息子の姿を見てホッとしたのに「あんたって子は何を考えてるの?」とまた怒りが爆発しました。肝を冷やした叔母の気持ちなど知る由もなく、ユウキは「ごめんなさい」の一言も言いません。車で連れて帰ろうとしても、怒っているのかなかなか乗ろうとはしませんでした。ユウキは普段は素直に子供なのに、時々どうしようもなく強情になるのでした。

 その後、久しぶりにユウキに会ったとき、私としてはものすごく懐かしくて当時のままの気持ちで話しかけました。でも相手は私を昔のように親しい友としては受け入れてはくれませんでした。あの車で置き去りにされたときのことをひょっとして覚えているのかどうか尋ねてみました。残念ながら彼の記憶の底にはあの時の思い出は眠っていませんでした。第3者の私がどうなるのだろうかとどきどきした事件なのに当の本人は覚えていませんでした。あの時、叔母がユウキと対峙していた緊迫した場面で、私はニヤニヤ笑っていたとサラに言われてしまいました。本当はそうじゃないのにどうやら誤解されてしまったようです。私はただ親子のやり取りを見ていて、ハラハラして笑うしかなかったというのが事実です。

 いずれにしても、あのような事態は車の中だからこそ、十分に起こりえることです。普段の家の中なら別に何でもないことですが、車という狭い密室の中だからこそ耐えられないのです。いつも冷静な叔母の神経を子供が出した騒音は逆なでしました。それでもやはり子供を反省させるために車の外に出すのはやめた方がいいのではないでしょうか。あの時は子供の姿を確認できたからよかったのですが、一つ間違えば後で後悔することにもなりかねないからです。もしも子供が動いて勝手にどこかに行ってしまったら、自分の怒りなど一瞬で吹き飛んでしまうのですから。

mikonacolon