人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

アヌシーに行きたくなった

いつの間にか、マナの世界に入り込んで

 秋に行く旅行のために、フランス語の勉強をしているが、これが想像以上に楽しい。教材はコロナ禍の2020年に放送されたまいにちフランス語の講座で講師は大塚陽子先生だ。最初のうちはテキストがあったので、ICレコーダーに録りためてあった音源を聞かずにサラッと復習するだけだった。4月号、5月号と順調に進んでいたはずだったが、なんと次の6月号がない。あちこちひっくり返して探したにもかかわらず、見つからない。さあ、どうしよう、これからが大事なところなのに。でも少し考えてみたら、NHKのラジオ英会話だって、テキストなしで何とかなっている。まあ、あくまで自己満足の段階ではあるが。

 それで、フランス語も、音源だけでやってみることにした。あくまで入門編なのだから、聞いているうちに昔のことを少しは思い出すだろうと高をくくっていたが、その考えは甘かった。やはり、音だけでは一体全体何を言っているのかわからなかった。だが、不思議なことに、番組が終わる頃には、それまで目の前を覆っていた霧が嘘のように晴れてしまう。初めはカタカナでしか、書き取れなかった音が、単語になり、それがいくつか組み合わさって、ちゃんとしたフランス語の文になる。それというのも、親切丁寧な、講師の先生の説明があり、これ以上ないくらい文を一字一句ゆっくり読んでもらえるからだ。なので、感の悪い私でもハッとなり、なんとなく予想はできる。それに、こちらも、音だけを頼りに何とか自力で正解を探そうと悪戦苦闘するからだろう。

 もし、誰かが、私のすることをそばで見ていたら、何やってるの?と呆れられ、文句を言われてしまいそうだが、幸運なことに誰もいない。そうやって、何とか6月分の放送を耳をダンボにして、音にすがるように聴いていたら、今までにないような充実感を覚えてしまった。要するに、今までかなり文字に頼っていた勉強を音だけにしたことで、物凄く集中できたのだ。それこそ、先生の説明を一字一句聞き逃すまいとノートに書き取った。正直、今まで知っているつもりでいたことを、本当の意味で知らなかったことに気付かされた。

 さて、6月分はまとめの学習まで終わって、次は7月分だが、コロナ禍のせいで、変則的になっていて、続きは10月号になっていた。普通なら、以前のようにテキストを復習するだけでいいし、またそれが一番効率的な方法に違いなかった。だが、現在の私はその方法はあまり楽しくないと言うのが本音で、それにたいして自分の記憶には残らないと考えた。要するに、こう言っては何だが、勉強をしている自分の姿はあくまでポーズであり、傍から見れば、一応やっているように見えるはずだ。だが当の本人は本当の意味で集中はしていないし、また、心のどこかで面白くないなあと思っていたのだ。

 なので、私は音だけに頼って勉強を続けることし、テキストを開くのは最後の最後にしようと決めた。どうしてもわからなかった部分を確かめたりして、答え合わせのようにテキストを使っている。また、音だけに集中して講座を聞くことにしたら、毎回展開されるストーリーにも深く入り込んでしまった。フランスの田舎で暮らしているような気持ちでフランス語を学ぶのが本講座のコンセプトで、日本人女性と思われるマナが主人公である。マナが泊っている民宿はフランスのサヴォア地方にあり、と言ってもそれがどこにあるのかわからなかった。だが、すぐに謎は解けた、ワインやチーズの話題になり、近くの農場でチーズが買えることが分かったし、『コミュニケーションの鍵』という番組のコーナーでは詳しい説明があった。どうやらマナはスイスに近いレマン湖沿いにある小さな村に泊まっていて、アヌシーにも遊びに行き、”アヌシーの葦”という名物のお菓子も買って来た。

 となると、勉強の途中だが、自然とフランスの地図を開いて、サヴォア地方がどのあたりにあるのか確かめた。すると、レマン湖沿いにはエヴィアンローザンヌなどの聞いたことがある地名があり、国際都市として知られるジュネーブもあるので、こうなると、もうフランスというよりスイスと言っても過言ではない。それはさておき、食いしん坊の私の関心はもっぱらチーズやサヴォア地方の名物料理に向かう。あわよくば、機会があれば、それこそアヌシーにでも行ってしまおうかとさえ考えるようになった。なぜ、アヌシーかと言うと、パリのリヨン駅からTGVに乗れば、3時間半で行けてしまう便利な場所だからだ。

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