人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

バナナの秘密

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▲スペインのフィゲラスにあるベサルー村。20年ぐらい前はほとんど廃村のようだったが、今は整備され観光客が押し寄せている。NHKまいにちスペイン語テキストから。

最近のバナナが完熟していないのが気になるが・・・

 正直言って、私はバナナがあまり好きではありません。子供の頃からそうだったのですが、大人になるとなぜだか急に食べたくなる時があります。たぶんその時はきっと身体が自然と果物を、つまりバナナを欲しているのだと思うのです。ほんのたまに食べたい衝動に駆られることがあるのですが、ある日気づいてしまったのです。バナナが見かけは黄色で完璧な色をしているのにも関わらず、中身は熟していない事実に。スーパーで売られているバナナはラベルにちゃんと「甘~い」とか「完熟」とか「濃く味」とかの能書きが書いてあるのがほとんどです。それなのに買って帰って、食べて見ると青臭い味がします。想像を超えるレベルの物になると、食べる段階からゴリゴリと言った音がします。そんな手ごわいバナナに一度当たってしまうと、次回からは絶対失敗しないぞという警戒心が強くなります。

 いったい最近のバナナはどうなってしまったのか、と嘆いたこともありました。でもたまに食べるのですから、せっかくなら美味しい物を食べたいではありませんか。それで私が考えた作戦は、夕方のお買い得の時間を狙って買いに行くことでした。その日に売れ残った見切り品のバナナを半額以下で手に入れることができます。もちろん少し傷んでいることもありますが、腐る寸前の物なので当然よく熟していて、とても美味しいのです。最近はまともな値段でバナナを買うことはほとんどなくなりました。

 先日新聞でバナナに関しての記事を読む機会があり、その内容はとても興味深いものでした。日本で一番最初にバナナを食べたのは織田信長で、1569年にポルトガル宣教師のルイス・フロイスが献上したとされています。ただ、この説はメディアやネット空間で広く流布しているだけで、原典を明記している物はないそうです。「そもそも鮮度管理が難しいのに、船での輸送に時間がかかった16世紀にそんなことが可能なのだろうか」と筆者もその説を疑問視しています。

 特に驚いたのは、東京の大田市場の職員の方の「港に入って来るバナナはすべて緑色です。黄色くなっていたら廃棄処分です」という説明でした。植物防疫法の決まりで、熟したバナナは輸入不可なのです。つまり、あの鮮やかな黄色とねっとりとした美味しさは人の手を介した熟成(追熟)によって生み出されるわけです。大田市場では室(ムロ)と呼ばれる貯蔵施設にバナナの箱が次々と積み上げられていきます。緑色のままの青いバナナを熟成させるムロは今では自動制御で管理されています。昔は微細な温度、湿度管理や換気が大変で、バナナが高級品だった昭和30年代は「地下ムロ」を利用しました。深く掘られた場所で酸欠に気をつけながらの人力の作業だったのです。

 バナナが本格的に入ってくるようになったのは1903年で、台湾から持ち込まれました。その頃はまだ鮮度管理の技術も進んでいなかったので、陸揚げされる頃には熟成が進んでいました。なるほど、そう言う理由があったのですね。どうりで子供の頃、バナナと言えば、たいていは台湾バナナでした。当時のバナナは完全に熟していて、甘くて、ねっとりした独特の触感が特徴でした。そう考えると、現在はフィリピン、エクアドル、ペルーなどの他国からの物流も盛んで、鮮度維持や熟成の技術も向上しています。あくまでも植物防疫法を順守しながら、その結果なのか、たまに八百屋の店先にまだ青々したバナナを見かけることがあります。その際は当然ながら八百屋の棚がムロになって、そのまま自然に熟成が進むのでしょう。

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