人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

イチゴ狩りより野菜狩り

 

意外にあっけなく、野本さんの憂いは晴れた

 前回の最後の場面で、野本さんは浮かない様子をしていた。それが気になって仕方がなかったが、今回の続きを見て、ホッとひと安心した。このドラマに不穏な空気などふさわしくないし、またあってはならないのだ。これはNHKの夜ドラ『作りたい女と食べたい女』の話だが、今までこの女同士のカップルは上手く行きすぎていた。ひとりがあることを提案すると、もうひとりは必ず「いいですね」と答えて事は進んでいく。すべてが野本さんのやりたいように進行し、春日さんの意見は無いのも同然だ。もっとも、春日さんは野本さんと万事が万事ぴったりというわけでもないのだろうが、見ている方は少し違和感を抱いたのも確かだ。このカップルには意見の衝突というものがなく、春日さんには、ああしたい、こうしたい、が無いのだろうかと不思議に思っていた。

 ひよっとして春日さんは野本さんに遠慮して、合わせているのかと思っていた。それにしても、春日さんは野本さんのすべてを肯定し、とても幸せそうにしているのはどうしてなのだろう。正直言って、普通はあり得ないことだと内心思っていたら、野本さんは気づいてしまった。要するに、これまですべて自分の意見を春日さんに押し付けていたのではないかと、南雲さんの一言で気付かされたのだ。「春日さんはイチゴ狩りって言ってたけど、野菜狩りになったんですね」。南雲さんに言われて初めて、春日さんの気持ちなど一切無視して、自己満足していたのに過ぎなかったと。

 春日さんはいちご狩りの施設内にレストランがあることを調べていたようだが、自分が「お弁当を作るね」と言ってしまったせいで、そこで食事をしたいとは言いだせなかった。野本さんは自己嫌悪に陥った。視聴者としては、平穏な日々が続くのは2人の相性がいいのと、春日さんが野本さんの提案を「いいですね」の一言で受け入れるからだと思っていた。また、誰かに相談するのかと思ったら、今度は直接春日さんに自分の想いを伝えたことは少し意外だった。「春日さんも、自分の意見をちゃんと言ってください、これから一緒に住むのだから」とストレートに言い放った。

 すると、春日さんは「私は子供の頃から、自分の意見を言うのは苦手なんです」と答え、野本さんが気にする必要はないと言う。そうなったのは、自分の家庭環境に原因があるので、これまでずうっとそうやって生きて来た。それでも、いちご狩りに関しては、母親と一緒に行って、楽しい思い出があるので、「行きたかったです」と本音を打ち明けてくれた。野本さんはそれを聞いて、「罪悪感で押しつぶされそう」と頭を抱えてしまう。

 それにしても、なぜ、野本さんはイチゴより野菜を選んだのだろうか。普通はイチゴと野菜を比べたら、どうしたって、甘く熟したイチゴの方に惹かれるだろう。それなのに、野本さんの頭の中は、「イチゴもいいけど、野菜の方がおかずになる」と、誠に実用的で主婦目線の発想しか浮かばないらしい。かくして、甘いイチゴをお腹いっぱい食べるという春日さんの夢は儚く消えて、腰が痛くなるほど野菜を収穫する羽目になった。まるで、小学生のように童心に帰って、きゃあきゃあ言いながら野菜を引っこ抜く野本さんは終始上機嫌だ。一方の春日さんはお昼休憩で、「夢中でやっていたら、腰に来ましたね」と珍しく本音を漏らす。

 二人が野菜を収穫する場面を見ていて、気になったのはブロッコリーだった。私は子供の頃に農作業の経験があって、キャベツや大根ぐらいはどんなものかわかるが、ブロッコリーはスーパーでしか見たことがなかった。あれはずいぶんと大きな木に生る花のようなもので、スーパーで見かける部分は大きな木のほんの一部に過ぎないことが分かった。それを証拠に、あのブロッコリーの茎の太さを見れば、けっこう立派で頑丈な木であることが一目瞭然だ。関係ない話だが、どちらかと言うと、私はあの花より、ブロッコリーの茎の方が食べておいしいと感じる。いつも、私は茎の部分しか食べない。

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