人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

エレーヌ・モンパルナスでの災難

 

このホテルはとても素敵、と思ったら・・・

 モンパルナス駅近くのホテル、エレーヌ・モンパルナスは客室が白で統一されていて、とても感じがよかった。もちろん、湯沸かしポットも、コーヒーカップもあったし、ミニバー(冷蔵庫)もあって、中にはちゃんとミネラルウオーターも入っていた。やっと、自分が求めていた快適なホテルに巡り合って、とても満足していた。せっかく落ち着いたのに、私にはやらなければならないことがあった。それはホテルからモンバルナス駅までの道順を確かめ、駅でTGV乗り場を下見することだったが、部屋の窓から外を見ると、もうだいぶ薄暗かった。はっきり言って、その道順は簡単で、分かりやすいものだったが、こうもあたりが暗いと、もしかしたら迷ってしまうかもしれないと、本気でそう思った。それで、朝早く出発することに決めた。それに、TGVの乗り場は、過去に何回も乗っていたので、2階にあるとわかっていたから。

 ホテルのベッドに寝っ転がって、テレビを見ていた私は、そろそろシャワーでも浴びようと思った。やはり、旅の疲れは熱いお湯で洗い流さないと・・・。できればもっとグタグタしていたかったが、バスルームに行く。シャワー室は広めで扉も付いているから、外にお湯が漏れることもないので、大丈夫のはずだった。ところが、この後私のまさかの心配は、現実のものとなった。パリに着いて最初のホテルでも、トイレの水漏れという災難に遭遇したが、ここで再び起こるとは思ってもいなかった。

 私は安心して、熱いお湯を全身で浴びていた、それもかなり長めに。でもついつい気なって、シャワー室の床を見ると、信じられないことに、お湯が外に漏れていた。「漏れていた」だけなら、まだしも、よく見たら、バスルームは水浸しだった。ああ、ついにやってしまった、正直そう思った。思えば、よくホテルのバスルームを水浸しにして、ホテルの人が血相を変えて飛んできた、という話を耳にしていたが、まさか、まさか、自分がやらかしてしまうとは、夢にも思わなかった。それからは大変だった。なんとかして、この悲惨な状況を何もなかったことにしようと、躍起になった。ほとんど裸のまま、バスタオルで床を拭くのに熱中した。しばらくして、床が元通りになったときはホッと胸を撫でおろした。だが、現実はこれで終わりではなかった。

 バスルームのドアを開けた瞬間、仰天した。なんともう少しでベッドの下まで水浸しになるところだった。危く客室の外にある廊下まで水が漏れそうだったが、何とかそれは免れた。バスルームの床に続いて、今度は客室の床を何とかしなければならない。シャワー室に入るとき、脱いだスリッパはグショグショでとても履けなかった。まさか靴を履くわけにもいかない。それで、クローゼットの上部に置いてあった毛布を引っ張り出して、床に敷き、バスルームへの道を作った。その上を裸足で歩いて、何度も往復し、床を元通りにするのに悪戦苦闘した。

 幸運だったのは、このホテルが暖房がよく効いていて、すぐに床が乾いたことと、廊下にまで水が行かなったことだ。水漏れの原因は、シャワー室の床に段差がなくて、外に漏れる作りになっていたことに尽きる。また、ドアはあるにはあったが、ゴムのパッキンも何もついていなかったため、外に水が漏れるのは当然だった。私の嫌な予感が当たったのだ。後にも先にも、シャワー室での災難はこの時が初めてだった。客室は快適なホテルなのに、あんなことになって、落胆したことは言うまでもない。何だか、今回の旅行は水難に見舞われることが多かった。しかも、値段もそれなりで欠点など見つかりそうもないホテルでの災難に愕然とした経験だった。念のため言っておくが、どんな安ホテルでも水回りだけはちゃんとしているのが普通なのに。

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