人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

自転車に乗った野球部の彼

 

今週のお題「大切な人へ」

 

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なぜ私の方を見るの?

 あれは、確か中学生の頃の話で私は教室の窓際の席に座っていたのです。その時は授業中でふと外を見ると、誰かがこちらを見て笑っていたのです。それは向かいにある別のクラスの教室からで、中庭を隔てて教室が向かい合っているのです。笑顔の主は運動神経がよくて顔もまあまあだけど、ちょっと頭に問題がある男子でした。でも女子にも結構人気があって性格は悪くはありません。その男子が毎日のように私の方を見るので、気になって鬱陶しくて仕方ありません。たまらずある時文句を言いに行くと、「お前のことを見ているわけではない」と反対に怒るのです。「とにかくもう見るのはやめてよ、迷惑だから」と言ったものの、誰を見てるかまでは聞きませんでした。

 ところが、あくる日からまた始まったので、隣の席に座っている友達に「あれほど文句を言ってやったのにまた見てくるよ。どうしよう」と打ち明けました。そしたら、友達が恥ずかしそうに「私とテル(その男子の名前)は付き合ってるの」と言うではありませんか。その言葉でやっと状況が呑み込めました。二人は授業中に密かに見つめ合っていたのです。テルが見ていたのは私ではなく隣にいる友達だったんです。それにしても、知らなかった、ふたりがそんなことになっているなんて。「早く言ってよ、迷惑だったんだから」と友達にさんざん文句を言ってもニコニコするばかりで話になりません。

野球部の彼にマフラーを

 そのころよく読んでいた雑誌にバレンタイン特集が載っていて、そのページに「手編みのマフラーを彼に贈ろう」という記事がありました。友達はもちろんテルのために、私も片思いの彼に手編みのマフラーを編もうと決めたのです。私の片思いの彼は誰もが認めるイケメンでまつげが長い美男子でとってもカッコいいんです。野球部のエースでいつも自転車に乗って学校に通っていました。いつも遠くから眺めていただけで、ゆっくり話をしたこともないのに、好きだなんて信じられませんよね。同じクラスになったときは、彼の美しい横顔を見つめていたことを覚えています。

 私と友達は放送委員でお昼休みになると、放送室に行って昼の放送のために音楽をかけるのが仕事でした。給食を食べながら自分たちの好きな音楽をかけていい時代でした。そのころ流行っていたポール・モーリアの「オリーブの首飾り」や「エーゲ海の真珠」などをかけながら、マフラーの進み具合の話をしました。2月14日までに何とか仕上げようというモチベーションが強くて、毎日遅くまで編み物をしていました。編み物をするのは初めてなので、なかなかきれいに編めなかったでしょうに。

友達の一言に動揺して

 さて、バレンタインデーの当日、友達はテルにマフラーをちゃんと渡しました。でも私は結局渡せなかったんです。彼にマフラーを渡す気満々だったのに、友達が「やめといたほうがいいよ、どうなるか考えてみなよ」と言ったのです。友達のその一言で、私は我に返り、今まで自分の気持ちだけで突っ走ってきたことに気が付いたんです。考えてみれば、彼女でもない子に手編みのマフラーを貰っても困りますよねぇ。渡さなくて正解だったのだと思います。あれから何年か経って、同窓会で会うこともありましたが、そのころはもうさすがに恋心は消えていました。

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