人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

魚をおろすための道具を買い揃える

今週のお題「買いそろえたもの」

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一発奮起して、習いに行ったらトホホな目に合う

 以前、魚をおろすのくらいできたらいいなあ、と勇気を出して一人で習いに行ったことがある。若い頃から、釣り番組で猟師さんが魚をチャチャチャッと手早く刺身にするところとか、あるいは料理番組でイケメン俳優がこんなの朝飯前ですとでもいうかのようなスマートな手さばきを見るにつけ、憧れを抱いていた。何にかというと、魚を素早くさばいて、刺身にしたり、たたきをにしてしまえる能力にで、自分にもあんなことができたら、きっと何かの時に役に立つ、そうなんです、実益第一で私には楽しいが欠けていた。魚を下ろせたら、どんなにか楽しいだろう、などとは露ほどには思わなかった。考えてみると、魚を下ろす必要のある場面に出くわすことなど、日常生活においてめったに巡っては来ない。だが、とにかくその頃は、なんでもできないよりはできた方がいいし、それが生きる上での自信につながるのだと信じて疑わなかった。だが実際は、高いお金を払ってまで。勇気を出して習いに行ったわりにはひどい惨状だった。自信どころか、かえって自分のダメさ加減を思い知らされてしまった。

 なぜ、そんなに魚を下ろすことにこだわるのかというと、昔よく読んでいたクロワッサンという雑誌があって、そこに載っていた記事がとても印象に残っているからだ。それは魚の下ろし方教室を主宰している女性の話で、「肉よりももっと魚を食べる食生活を」と呼び掛けていた。普段の生活に魚を取り入れるためにはどうすればいいか。そのためには安く魚を手に入れて、自分で好きなように調理できなければならない。スーパーでひと盛いくらで売っている安い魚は、当然自分で下処理をして食べることになる。もちろん刺身では食べられないかもしれないが、3枚下ろしにすればいくらでもヴァリエーションが付けられて便利だ。主婦たるもの、魚ぐらい下ろせなくてどうしますか、みたいな主張をしているかのように私は受け取った。それに言われてみれば、魚が下ろせたら、作れるおかずの幅がぐっと広がって楽しいかもとも思えて来た。そんな思いを胸に抱えたまま、たいして気にもせず、何も行動に移せないまま時間だけが過ぎて行った。

 一発奮起した私は、魚を下ろすのを教えてくれそうな料理教室を探した。たしかよく行く都心の本屋の近くに私でも知っている有名な料理教室があったはずだ。その教室があるビルの前まで行ってみると、パンフレットが置いてあったのでパラパラと捲ってみた。実はそこに行く前に家でネットで検索したみたのだが、そこは月謝を3カ月分前もって払うシステムだった。それに、4人で一組になって料理することになっており、なんと一人につき魚はたった1匹しか触らせてもらえない。これじゃあ、まるっきり見学で終わってしまうではありませんか。ここでは何も学べない気がするので、迷うことなくパスだった。

 どこかもっとたくさんの魚に触らせてもらえるところはないかとさらに検索を続けた。すると魚屋さんが主催している教室が見つかったので「これだ!」と喜んだ。なんとそこではひとり10匹のアジを下ろす練習ができる。いくら何でも10匹も試すことができれば、誰だってそのテクニックを習得できると簡単に考えていた。もちろん先生が懇切丁寧に指導してくれるだろうし、何の心配もないはずだった。さて、そこに申し込みをすることに決めていたが、なんせロクな包丁を持っていない。教室にはちゃんと道具が全て用意されてはいるが、家には普通の包丁しかなかったので、帰ってきてから練習するための道具が必要だった。それで教室で売られていた包丁、鱗とり、骨付き等の道具一式を買った。その時支払ったのは受講料の7千円を含めて、2万円を出したら、少しお釣りが帰ってくる程度だった。今から思えば、アジ10匹で7千円は少し高すぎるが、当時はそんなことは考えもしなかった。

 冒頭に書いた通り、予想外に苦戦したが、意外に思ったのは先生に褒められるほど上手な人も参加していたことだった。「なかなか手つきがいいねえ」と言われて満面笑顔の人を見ていたら、「それなら習いに来る必要などないのに・・・」と内心思ってしまった。予想と違ったのは、懇切丁寧に教えてもらえるはずだったのに、先生がやるのを一度見学しただけで、「さあ、皆さんもやってみましょう!」となったこと。私は説明を聞きながらメモを取っていたが、中にはスマホでビデオを撮っている人もいた。あれは確かに賢いやり方だったと思う。苦い思いをした私は帰りにスーパーに寄って、アジ3匹が入ったパックを買った。家で先ほど習ったことを復習しようと、パックから魚を取り出そうとして仰天した。魚の表面がヌルヌルで触った感じが気持ちが悪い。魚屋さんの魚は仕入れたばかりでつやつやで新鮮その物なのだから、当然だった。一応、3匹とも3枚下ろしにしてはみたが、食べる気がしなかった。

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