人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ねことことり

ぜひ手に取って、眺めて欲しい絵本

 新聞の投稿欄に載っていた西田美子さんの記事のおかげで、私は今絵本に嵌っている。実を言うと、その2,3日前にとても惹きつけられる絵本の広告を発見した。それは『ねことことり』というタイトルの絵本で、「ねことことりそれぞれの視点から見える幸せの価値とは?」という何やら意味深なフレーズが付け加えられていた。それと、この絵本には沢山の絵本大賞の受賞歴があるそうで、因みに、MOE絵本大賞、未来屋絵本大賞、リブロ絵本大賞、日本絵本大賞と、これでもかと言うほどの輝かしい賞を受賞していた。となると、いったいどんな内容の本なのかと、私の好奇心は最高潮に達した。新聞の広告の部分を切り抜き、近所の本屋に行ってはみたが、当然見つからないので、やっぱり大型書店に行かなきゃと休日に行く気満々だった。

 とはいえ、大型書店のある場所はついでに行くにはあまり用が無いところだった。それで、私はダメ元で、いつものように図書館サイトをチェックしてみた。簡単検索の図書名のところに「ねことことり」と入力した。当然、「この書名は該当なし」と出るものだとばかり思っていたら、驚くべきことにヒットした。何と、新刊に分類されていて入ったばかりで、しかも、誰も借りてはいない。私は自分の目を疑った。なぜ、こんな高い評価を受けている絵本なのに人気がないのか、なぜ誰も見向きもしないのか、理解に苦しむばかりだ。それなら、まあいい、私がどんな本か見極めてやろう、ぐらいの軽い気持ちで予約した。もちろんワクワクドキドキして、取り置きメールが図書館から届いた時にはスキップするくらいの気分だった。

 そうやって、期待感に溢れんばかりで、絵本を開くと、そこは美しい細密画の世界だった。細密画と言うと、私が知っているのはインドのもので、新聞の文化欄でよく目にしていた。ねこはもちろん、ことりも見事で、なんといっても、色とりどりの花々や緑豊かな樹々の美しさに目を奪われた。ストーリーよりも、まずは視覚から見る者の心を鷲掴みにする。1ページ、1ページが一枚の完成された絵のように思えて来て、思わず見取れてしまう。これを描くのに、とんでもなく膨大な時間がかかっているだろうことは、浅薄な私でも十分想像できる。それにしてもなんと美しいのだろう、まるで人間が作り出した魔法の産物のように思えてくる。なるほど、この仕事は数々の栄えある賞に値することは間違いない。なんだか、ではなく、とても、貴重な経験をしているのだと自分でも納得する。この絵本に出会えてよかった、新聞の広告に気づけて良かった、忘れん坊の私が忘れないでいてよかったと本気で思った。

 さて、肝心のストーリーのことだが、がっかりするくらいに何も起こらない。と言うか、不穏な雰囲気は全く感じられない。逆に、またそこがいいのかもしれない。タイトルのとおり、ねことことりの話で、ねこの仕事は毎日運ばれてくる小枝を綺麗に並べて紐で縛ることだった。絵本の帯には、「束ねる」と書いてある。ある日、そこにことりがやってきて、「小枝を分けてもらえませんか」と頼む。ねこは小枝を納めないとお金がもらえないので、それはできないと断る。すると、ことりは「では、一日に一本だけならどうですか。どうしても7本いるので、七日でいいのです」と懇願する。ねこはそれくらいならいいだろうとしぶしぶ承知する。ことりが毎日ねこのところに通ってくるようになると、ねこはことりと仲良くなった。いつの間にかことりが大好きになったねこは、ことりが来なくなると、仕事が手につかなくなった。

 どうやらねこにとって、小鳥の存在は想像以上に大きかったようだ。鬱々とした日々を送るねこのもとにある日、嬉しいサプライズがもたらされる。それを書いたら、この絵本を読んで見ようという気が失せることは間違いないので、敢えてやめておこう。たぶん、公立図書館にはあると思うので、機会があったら、ぜひこの絵本を手に取って眺めて欲しい。飽き飽きして、見慣れた日常が変わることは間違いない。

 

 

 

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