人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ひみつのたからもの

ねこの秘密は、なんとお魚が大好きなことだった!

 この豊福まきこさん作の絵本『ひみつのたからもの』は、偶然図書館サイトで見つけた本だった。ブログで既述した刀根里衣さんの『なにもできなかったとり』を検索していた時に、新着の図書の欄で見つけて、誰も借りていなかったので予約したというわけだった。ついでと言ったら、語弊があるが、やはり偶然の産物には違いない。最初は絵本にありがちな、ハートフルストーリーを期待していたら、ものの見事に裏切られた。なんとも可愛らしい猫のイラストからは想像もつかなかったが、この本の猫は誰にも言えない秘密を抱えていた。それは猫のくせにお魚が好きすぎて、魚を食べられないことだった。こんなことは仲間の他の猫に話してみても、変人、いや、変猫扱いされるだけで、まともに取り合っては貰えない。それどころか、変な奴だと、仲間外れにされるのが落ちだった。「僕はお魚がどうしようもなく好きだ」と叫びたくても、我慢しなければならなかった。家の中にはいくつも水槽があって、色とりどりの美しい魚を眺めて暮らしていた。

 自分の大切な魚と食べる魚は全く別物なのではないかと、こちらは思うのだが、この猫にとってはたいして違いはないらしい。魚は魚なので、やはり食べる気にはならないらしい。どう見ても、現実にはありえない猫だとしか思えないが、そんな猫もいるのかと思えてくるから不思議だ。そもそも猫のステレオタイプが私の頭の中に刷り込まれているから、そう感じるのだろう。その点において、この絵本に出てくる猫には、ええ!?こんな猫がいるの?と疑いたくなるが、よく考えてみると、猫だって、性質や性格が十人十色であってもいいではないか思えてくる。だいたいが絵本の創作自体が自由であっていいのだから。

 ある日、お魚が大好きな猫に嬉しい出会いがあった。仲間と一緒に鳥を取ろうと出かけようとしたとき、一匹の猫だけは「行かない」と帰ってしまった。仲間に理由を聞くと、「あいつは鳥を取るのを嫌がって、いつも行こうとしないんだ」と不満そうに答えた。どうやら、その猫は鳥が好きすぎて、鳥を取るなんてことは可哀そうでできないらしい。猫は思った、僕と一緒じゃないかと。自分の片割れのような同類を見つけた気がして、猫は有頂天になり、思わず叫んでしまった、「僕と友だちになって」。猫は鳥が大好きな猫を、家に連れて行って、自分の宝物の魚のコレクションを見せる。本当はどれだけそうしたかったかわからない、でも出来なかった。だれも自分の鳥が大好きだという気持ちを分かってくれようとはしなかったから。

 鳥が大好きな猫の家に行って見ると、部屋中がまさに鳥小屋のようで、珍しくて美しい鳥が飛び回っていた。凄いね!と、褒めるとその猫は満面の笑みで答えた。君の気持ちを僕は手に取るようにわかるよ、とお互いに認め合った。二人は、いや、二匹は仲間から変な奴と言われようと、もう気にしなかった。なぜなら、二匹は二匹だけの世界を手に入れたことで、とても満足していたからだ。そうなると、猫の秘密の宝物はもう秘密ではなくなった。秘密という言葉には何か後ろめたいようで、何やら甘い響きもあるが、それを抱えることは苦しいことには違いない。もしかしたら、漏れてしまったらどうしようとかという恐れも抱きながら、日々を送ることになる。この絵本の猫はそういう意味では秘密をため込む息苦しさから解放されたと言えるだろう。

 この猫は自分が他の猫と違うということに、よくあるコンプレックスを抱えていたようには見えない。それは好きが強すぎて、そんな余分な感情は入り込む余地がなかったと見る方が正しい。誰にも言えない秘密を抱えながらも、家では自分の好きな魚に囲まれて至福の時を過ごしていた、と私にはそう思えてならない。

 

 

 

 

 

 

mikonacolon