人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

工事現場でもないのにバリケード

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▲幅 2.7㎞に大小275もの滝が連なるイグアスの滝。HNKまいにちスペイン語6月号から。

早朝の世界は昼間見えないものを見せてくれて

 毎朝5時15分に起きて散歩に行くと、ネコに遭遇することがあります。その時のネコはトラ猫で、よく見たら顔がブス可愛いくて、なんだか笑えてくるのです。誰もいない道路をゆっくりと歩いているのですが、思わず「ネコは早起きだなあ」と呟いてしまいます。そりゃあ、誰もいない道はネコ様専用で、向かいから歩いてくる私などはいい迷惑でしかありません。すれ違う時にこちらをちらっと見るのですが、逃げる気配はみじんもありません。こんな朝早くからどこへと人間の方が気になって、後をついて行くとそこはマンション風のアパートでした。階段を昇っていったと思ったら、たちまちネコの姿は消えていました。まるで、これじゃあ、ネコのストーカーではありませんか。

 またある時は、家に帰ろうと路地の狭い道を歩いていたら、一匹のネコと出くわしてしまいました。こんな時人間なら「どうぞ、お先に!」と道を譲るのですが、ネコにはその常識は通用しませんでした。こちらが遠慮してじっと待っていたら、ネコは少しの間どうしようか躊躇していたようですが、回れ右をして反対の方に歩き出しました。そして、家と家との狭い空間に入って行ってしまったので、もう人間では追跡が不可能になりました。

 そう言えば、田舎に居た子供の頃、不思議な生き物が身近にいたことを思いだしました。家の垣根の隙間とかに突然現れて、チラッと姿が見えたかと思ったらあっという間にいなくなります。薄い茶色の、どちらかといえばベージュといった方がいかもしれない小さな生き物、それはイタチでした。特に人間に危害を加えることもないので、誰もが見て見ぬふりをしていました。なぜこんなことを書くのかというと、最近の昼間の世界では滅多にネコの姿を見かけることがなくなったからです。近所を歩いている時はもちろん、たまに公園の近くに行くことがあっても、居るのはネコではなく人間たちです。タバコを吸ったり、何やら飲み物、まさかのチューハイ?などを飲んでいるようです。

 私が今住んでいるのはネコが消えた世界なので、ネコに出会えるかもしれない早朝が楽しみなのです。ところが、最近は誰もが暑くなる前に運動をしたがるので、早朝なのに人が結構いるのです。だからか、ネコは警戒してあまり姿を現さないようで、彼らも静かな方が落ち着くようです。コロナ禍だからということに関係なく、誰もいない世界は爽快で落ち着くのだと感じたのは予想外の発見でした。

 一方で人間の世界では、カフェの店の前に置かれた長椅子を巡ってバトルが繰り広げられていたのです。コーヒー豆の売買が専門の会社が小さなカフェを開いたのですが、店のイートインスペースは狭いので外に長椅子を置きました。そこはもちろんお客さん専用なのですが、早朝にはそこを有効利用する人もいるわけです。以前、私が見かけたのは中年の男性がパンを頬張り、飲み物を飲んで一休みしている姿でした。なるほど、散歩途中で一息つくのには絶好の場所です。でも普通の人は私も含めてどこか落ち着かない雰囲気を感じてしまって、実際に利用しようとは思わないのです。

 何度かいつもの男性が座っている姿を見かけたある日、カフェの長椅子に空のパンの袋や飲み物の缶などが散らかっているのを見つけました。もちろん誰の仕業かなんてことはわかりません。店の方も勝手に使われて、汚されては堪らないと、「使用禁止」の紙を椅子に貼りました。それでも無断使用は止まなかったので、店は強硬手段にでました。工事現場にある黄色と黒のバーをはめたオレンジ色のバリケード2個を長椅子の前に置いたのです。人間とは不思議なもので、なぜかそのバリケードをどけてまで長椅子に座ろうという気にはならないようなのです。

 ではなぜ工事現場にあるバリケードを使おうということになったのか。それはちょううど一軒先のビルが外壁工事をしていて、それを見たら「あれがいい!バリケードが役に立つ!」と思いついたのだと想像できます。だから一組譲ってもらって、店の営業時間外は試しにバリケードを置いてみました。その結果、効果抜群だったと言うわけです。それにしても、工事現場でもないのにバリケードだなんて!「これってありなの?」のと目から鱗の体験をしたのでした。

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