人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

猫のせいで胸が痛くて辛い?

5キロ?の巨体の猫が飛び降りたら、胸が痛~い

 先日私は実家の義姉のミチコさんにご機嫌伺いも兼ねてメールを送った。私の「大変、雪が降ってる。スコップ買って来なきゃ」の呟きに反応したミチコさんはすぐに電話をかけて来た。どうやら、「スコップ」に何かしら思うことがあったのか、「そんなの買ってきてどうするの。たいして使わないよ。塵取りで十分雪かきできるから」とホームセンターに行く気満々の私を止めたいようだ。実家の前にある道路から玄関先まで約5mくらいあるが、植木が所せましと繁茂しているのでけもの道になっている。そこに人ひとりやっと歩けるくらいの細い道をミチコさんは作っていた。そのヘビのように細い道に積もっている雪をどけるくらいなら、塵取りで十分と言いたいのだった。

 ミチコさんの説得に素直に従ったら、ホームセンターに行く気は無くなった。だが、その後ミチコさんがどうも具合が悪いらしいとわかって仰天した。いつも明るくて元気なのにいったい何があったのだろう。話を聞いてみると、寝っ転がっていたら、飼い猫がキャットタワーの上からミチコさんの胸のあたりに飛び降りたらしい。何しろそのネコが5キロ?もある巨体なものだから、胸にズシ~ンときた。まあ、いつもやられているから、気にもしなかったが、その日は違った。間髪おかず二度もやられてしまったのだ。そのせいか、胸が痛みだしてしばらく起き上がれなかった。

 すぐに治るだろうと高をくくっていたが、いつまでも痛みは収まらない。人は身体のどこかが痛いと食欲がなくなるものだが、ミチコさんも例外ではなかった。なかなか治らないので、いつも診てもらっている接骨院に行って、レントゲンを撮ったら骨折はしてはいなかった。だが痛いのには変わりはないので、しばらく通わなければならない。それは別にして、もう二度とネコに飛び降りられないように対策をしなければならない。キャットタワーの位置や自分が横になる場所をどこか他の場所に移せればいいのだが、現実的に無理があった。

 それでミチコさんが何をしたかと言うと、それを聞いて私は目から鱗だったが、トゲトゲシートを胸に乗せて横になることにしたのだ。その名前を初めて聞いたが、トゲトゲシートは猫の侵入防止のためのグッズらしい。丸い穴がいくつも空いていて、穴の周りにはチクチクするトゲトゲがいっぱいついていて猫が嫌がる?ようになっている。私が「賢いねえ。でも何でそんなことを知っているの?」と尋ねると、隣の家の塀に並べてあったのを思い出したのだと言う。野良猫や他所の飼い猫に侵入されないための対策だが、果たして効果があるのかどうかは分からないが。

 その優れもの?のトゲトゲシートをミチコさんはなんと百円ショップで買ってきた。そんなものまで百円ショップで売っているとは!私にとっては驚きでしかない。それにそんなトゲトゲが付いているのだから、手に刺さったら危なくないのか心配になる。だがミチコさんはそんな心配などどこ吹く風で、まず猫に触ったら痛いことを教えた。無理矢理猫の手をトゲトゲに触らせたら、猫も痛いことが分かったらしく、それ以来飼い主の胸に飛び降りようとはしなくなった。素晴らしい大成功だが、依然として今もミチコさんの胸の痛みは消えてはいない。

 「なんか私、こうやってだんだんと年老いてゆくのかなあ」などと弱気なことを言うミチコさんは初めてだ。いつになく、しみじみとして悲哀に満ちているが、生来明るい性格で社交的な彼女のことだ、きっとそのうち復活するに違いない。接骨院から貰って来た痛み止めの薬を飲んだら、お腹まで壊してしまった。なので今はお粥を食べている。そう言えば、以前も猫のせいで足首をねん挫したことがあった。食器を乗せたお盆を台所に運ぼうと、玄関のあがりはなを通ろうとしたらそこに猫がドデ~ンと横たわっていた。猫は明後日の方を見ているのか知らんぷりでどく気はさらさらないらしい。そうなると自分が何とかして通るしかないとミチコさんは考えた。だがほんの一瞬バランスを崩したせいで玄関の土間に落っこちてしまった。すぐに起き上がったが、足が痛い。びっこを引いて歩くのが精いっぱいだった。猫は確かに可愛いが、禍の元もまた猫だなんて、何と皮肉な事なのだろう。

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