人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

栗とサツマイモ、どちらがお好き?

 

さつまいもは日常、栗は高級感がある

 朝日新聞の土曜版Beに「栗とさつまいも、どちらがお好き?」というアンケートが載っていた。紙上では59%で栗が好きな人が多かった。なぜ栗が好きなのか、その理由として挙げられるのは、その高級感に他ならない。私などは、栗と言うと、マロングラッセを思い浮かべ、栗が丸ごと入ったモナカが天文学的に高い値段なのを見るにつけ、どうして栗はこんなに高いのだろうとため息が出る。とは言っても、栗にも優劣があって、美味しいものとそうでないものとの味の差が激しいことは見当がつく。昔兄が栗狩りに行って、家に持ち帰ってきた栗はまだイガイガのとげに包まれていた。それを茹でで食べてみたら、何のことはない、畑にゴロゴロなっているサツマイモと同じ味がしたので、がっかりした。それくらい、栗とサツマイモは似たような味がするものだとばかり思っていた。

 ところが、大人になって、栗そのものよりも、栗を使ったお菓子、たとえば、栗羊羹、栗入りクリーム大福、マロンケーキなどの味を知ってしまったら、栗の持つ深い味わいに病みつきになった。自分が知っているサツマイモとは一線を画す味わいに、だからこそ栗は少々高くても仕方がないと納得した。それに、お節料理に付き物の栗きんとんは甘くておいしいので大好きだ。ただ、スーパーに売っている栗きんとんは栗もどきで、必ずサツマイモが代わりに入っていることが多い。値段が安いのだから、買う方も納得しているのだろうが、本当の栗だけのものは値段が高いに決まっている。

 栗を使った代表的なケーキとしてはモンブランがあるが、実は私はあれが苦手だった。ケーキの上に乗っかっているマロンクリームのうずまきのデコレーションがなんとも甘ったるくて、嫌だった。やがて、そうではなくて、高級洋菓子店のモンブランは甘さ控えめで上品な味だということに気付くことになるのだが。頭にこびり付いた偏見はそうやすやすと払拭できるものではない。それから、マロンケーキに対する思い込みも相当なものだった。スーパーに売っている某有名パン会社が製造した三角のマロンケーキ、あんな甘ったるい物を好んで食べていた時代があった。大人になると、好みが変わり、甘さ控えめのスイーツを好むようになった。甘ったるいのはお呼びではなくなった。でも、マロンケーキには依然として、昔の甘ったるいイメージが付き纏っていた。

 ある日、私はいとこの結婚式に招かれた。場所は東京の恵比寿にあるウエステインホテルで、あの頃はまだ三越があったときだ。そこで、披露宴で引き出物に出されたのはマロンケーキだった。考えてもみて欲しい、私の頭の中に浮かぶそれはなんとも甘ったるい代物で、自分がたいして食べたいものではなかった。それで、私はどうしたかと言うと、会社に持って行き、同僚に食べてもらおうとしたのである。その時はウエステインホテルの非売品であるそのマロンケーキが、どのようなものかなんてこと知る由もなかった。ホールのケーキを家でカットして、手づかみで食べれるようにウエットティッシュも用意した。昼休みに試食してもらったら、同僚のひとりが、「あれ~?」と言ったかと思いきや、何やら、「う~ん」と唸りながら食べている。いったいどうしたのか、彼女はまたもや「う~ん」と言いながら、目を閉じている様子。よく聞いてみると、こんな美味しいケーキは食べたことがないと感激していたのだった。彼女の発言に私は目を丸くし、ええ~!?そんなバカな、となった。こうなったら、自分で食べて確かめるしかなかった。

 さて、自分で食べてみたら、目から鱗とはこのことだった。2,3個栗が入っている以外何も入っていないシンプルなケーキは、甘さ控えめでしっとりとした上品な味だった。栗の渋みも全くなくて、上等の栗を使っていることは間違いない。それよりも、ただ、素直に「美味しい」」と口にせずにはいられない、それが何より重要なことだった。あれが、今まで食べた中で一番美味しいマロンケーキだった。

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