人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

思い出す友の告白

今週のお題「575」

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知らぬ間に 落としたお金 友のもの

 先日の新聞によると、今年は通常通り運動会を行う学校が多いそうです。その際、問題になるのがダンスなどの練習で子供たちが裸足になることです。「足の裏が痛くて、歩くのがつらい」と訴えたある生徒が皮膚科を受診すると、「低温やけど」と診断されたのです。これには仰天しました。以前犬の散歩を夏でも昼間する人に「ワンちゃんたちは何も言えなくて我慢しているのですよ」と注意を呼び掛ける記事を読んだことがありました。ふわふわいていて、衝撃から守ってくれるように見える、犬の肉球もやけどをするのだと知って目から鱗でした。人間の子ならなんだかんだと煩いことを言うので、わかりやすいのですが、動物は声をあげようとはしないので人間が気づいてあげることが大事なのです。

 子供たちがやけどをするのは校庭がコンクリートでできているせいなのかと思ったら、そうではなくて土でもたいして変わらないのだと知りました。ある建設会社の研究によると、気温が32度のとき、土の校庭の地表面の温度は52度にも達するとの信じられないような結果が出たそうです。熱中症に注意することは誰でも知っていますが、やけどにまでは考えが及びませんでした。思えば、都会に出てきて、何気なく覗いた小学校の校庭がコンクリートだったことに衝撃を受けました。田舎の小学校の校庭はもちろん土だったので、運動会の前日に雨が降ると校庭は田んぼのようにぐちゃぐちゃになりました。それで、全校生徒で協力して、水たまりに砂を蒔いたりして何とか無事に運動会ができたこともありました。その点から言うと、校庭がコンクリートだと何の心配も手間もいらなくて便利です。朝礼の時には皆で地面に落ちている石ころやごみを拾うのが習慣になっていました。

 当時通っていた田舎の小学校の近くに2つの文房具屋がありました。一つは正門の前にあって明治屋という名前でとても繁盛していました。もう一つは裏門にある弘文堂でこちらは子供の目から見ても普通でした。この店のおばさんはいつも着物姿で穏やかな人でした。あの頃の文房具屋は勉強のための物だけでなく子供が欲しがるものがたくさん売っていました。ぬり絵やら着せ替えやらゴム飛びのゴム等、それに香水の匂いのする消しゴムを集めるのが好きでした。家から歩いて30分ほどの学校に田畑を眺めながら、草木が生い茂る道を集団登校していました。私たちの通学路は裏門に通じていました。それで学校で使うノートや鉛筆、折り紙などは親からお金を貰って弘文堂で買っていました。自分の家の近くには店がないので、朝登校するついでに買うのです。朝出かけるときに母から「お金を落とさないように」と注意されて、スカートのポケットにちゃんと入れます。でも、いざ店に行って、お金を出そうとするとお金は消えていました。どうやら、歩いているうちにどこかで落としたようです。お金が無くなって家に泣いて帰ると、母は呆れた顔をしましたが、次の日にまたお金をくれました。当時はそんなことの繰り返しで、なぜあんなにもお金を落としてばかりいたのか、不思議で仕方がありません。

 ある日、同級生の男の子が私に向かってこう呟いたのです、「ずうっと前に道でお金を拾ったことがある。それはたぶんお前のものだとわかっていたけど、見つけたのは俺だから」つまり、彼はお金には名前が書いていないから、誰のものかはわかるはずがないと言いたいのです。だからそのお金は自分が貰う権利があると堂々と主張したのでした。落とす者がいれば拾う者がいるのは当たり前です。ポカーンとしている私に彼は「お前にひとことお礼を言っとかないと気持ち悪いから」と「あの時はありがとな」と感謝するのでした。どうやら落としたお金は彼の役に立ったようですが、そんなこと今更言わなくてもいいのにと正直思ったのでした。ここで、一句詠みます、知らぬ間に 落としたお金 友のもの

 

 

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