人生は旅

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古本屋でベストセラーの衝撃

今週のお題「575」

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トットちゃん 師に導かれ 救われる

 先日久しぶりに町の古本屋に行きました。偶然通りかかって、店頭に並べてある本を見ていてたら、誰でも知っている昔ベストセラ―になった本を見つけました。私の中では、古本屋というのは誰かが自分にとってもういらなくなった本を持ってくるところでした。だからたいしていい本はあるはずがない、どうせ暇つぶしになるくらいの本しかないだろうくらいにしか、思っていませんでした。ところが、そこで、外山滋比古さんの『思考の整理学』と黒柳徹子さんの『窓際のトットちゃん』を見つけて仰天しました。二つとも40年くらい前に出版されたもので、当時はベストセラーになった本です。何度読んでも飽きないと思うのに、手元に置かないで簡単に手放してしまう人もいることに驚きました。

 そう言えば、私も昔新刊本を本屋で買って、読んだらすぐに古本屋に売り飛ばしてしまったことがありました。でもそれはミステリーで真相がわかったら、そこで興味がなくなって「もういいや」となったからでした。それにあの頃は家の目と鼻の先に古本屋があったからでした。私が本を持って行くと、店のおじさんが「あとはもうないの?」とよく聞きました。つまり、新刊本がもっと欲しいとアピールしていたわけです。それでも、やっぱり自分にとってどうしても手放したくない本が私にだってあるのです。

 『思考の整理学』は薄い本ですが、中身は濃くて深いので、なかなかページが進みません。でも、冒頭のエッセイの「グライダー」には目から鱗でした。グライダーというのは風がなければ飛べないし、自力では飛べません。だから学校の生徒はグライダーで先生に引っ張られて、やっとのことで飛べているのです。つまり、学校というところはグライダー人間を養成しているようなもので、受け身の人間しかそこにはいないのです。まあ、学校というところは元来そういうところで、先生の言うことに逆らわなければ、無事に一日が過ぎていくのです。そんなところで、飛行機人間、つまり自分の意志を持ち、自分で考える人間が育つはずもないと著者は嘆いています。そして、学校も変わらなければならない、これからは飛行機人間でなければ生きていけない時代が来るはずだと予測しているのです。

 もう一冊の『窓際のトットちゃん』はもちろんタイトルは有名なので知っていましたが、読んだことはありませんでした。なぜかというと「内容がだいたい想像できるからつまらない」などと知ってるつもりになっていたからです。でも、実際読んでみると、想像を絶する内容で、椅子から転げ落ちるくらいの衝撃を受けました。問題児と一口に言っても程度というものがありますが、トットちゃんはスケールの大きな愛すべき困ったちゃんでした。授業中に普通の子のように大人しく座っていられなかったりするのはよくあることです。子供は不思議で面白いと思うものを見つけると無心にそれをやりたがります。トットちゃんは学校の机が引き出しではなくて、開け閉めできる仕掛けになっているのが面白くて、先生の苦情によるとそれを100回も繰り返すので甚だ迷惑なのだとか。また、それに飽きると窓際に行ってチンドン屋さんを呼び込んでしまう、そうなると他の子も釣られてしまい、授業にならなくなってしまうのです。

 最近は見かけることは無くなりましたが、まだ自動ドアが珍しかった頃に子供はよくドアの前を行ったり来たりして遊んでいました。大人が「危ないからやめなさい」と言っても言うことを聞きません。慌てて大人が止めに行ったら不幸にも挟まれて痛い目に合うのを目撃したこともありました。私が一番驚いたのは、トットちゃんの洋服はいつもビリビリだったと書かれていたことで、なぜ洋服が破れるのだろうと不思議でした。それはトットちゃんが普通の道を通らずに秘密の通路を通って学校に行くからでした。よその家の庭を通り、垣根を越えて、鉄条網をくぐって道なき道を進んで行くからでした。ちゃんとした道があるのにそこを通らないのは、きっと「ひどくつまらない」と子供心に思えたからなのです。

 そんな野生児のようなトットちゃんですが、心はライオンのように広くて大きいのです。小児まひで足が悪い友達がいじめられたと聞くと、居ても立っても居られず仕返しに行ってしまいます。あるいは「足が悪いから無理」と友達が断るのに、自分のお気に入りの場所である木の上に友達を連れてきてしまうのです。木の上からの眺めをどうしても見せたくて、普通ならやらないことでもやってしまいます。何よりも気持ちが勝って、考えるより先に行動してしまうのです。汗びっしょりになって二人で木の上に居たら、気持ちのいい風が吹いてきました。その時ふと「○○ちゃん(友達の名前)は今の気持ちを忘れないでいてくれるはず」と思ったら嬉しくなりました。

 担任の先生から「みんなの迷惑になりますから、他所へいらしてください」とトットちゃんは言われてしまいました。学校を追い出されたわけですが、ちゃんと受け入れてくれる学校が見つかりました。それはトモエ学園でそこで小林先生という校長先生に出会いました。面白いことに電車の車両が校舎になっていて、トットちゃんはこの学校がひと目で気に入り、やっと安心できる居場所ができたのでした。そこで、一句詠みます、トットちゃん 師に導かれ 救われる

 入学してみると、普通の学校とは違って時間割はありませんでした。何でも自分の好きな教科を勉強していいので、みんなそれぞれ自分のすることに熱中しています。算数の問題を解いている子の隣で、大きな声で歌を歌っている子もいます。でも誰も「うるさいからやめて!」とか「気が散るから静かにして!」などとは言いません。どんな環境の中でも自分のしたいことができる子になるようにとの校長先生の教育方針なのでした。

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