人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

再び、作りたい女と食べたい女

野本さんと春日さんのこれからが気になる

 この間から、NHKの夜ドラで、「作りたい女と食べたい女」のシーズン2が始まった。前回までは野本さんと春日さんが偶然出会い、いつしか2人で過ごすことが日常になり、幸せを感じるまでを描いていた。さて、今回は2人の間に何か進展はあるのだろうか。気になるのは、野本さんだけがひとり悶々としている点で、ドラマでは春日さんの思いは謎のままになっている。女性同士仲良くなるということが、そうなることもある、つまり恋愛感情を抱くことに、正直戸惑っている。だが、今の世の中にあって、そんな絶滅危惧種のような考えを押し通すことはできない。もはや時代遅れなのだと、ドラマの中の野本さんの春日さんに対する真摯な思いに注目するだけだ。

 片思いは辛すぎると、野本さんは毎晩思いを巡らせるのだが、果たして、告白したとして、野本さんの心の靄は晴れるのだろうか。私としては、もう少しこのままでいて欲しい。二人で一緒に料理を作って、食べて、「美味しいねえ、幸せだねえ」と語り合う姿がとても微笑ましいから。好きな人と一緒に料理を作り、食べて、幸せを感じるのは、ある意味とても貴重な経験だと思えてくる。なぜなら、「私は作る人」で、「あなたは食べる人」と言うように、きちんと役割分担されてしまうことが多いから。正直言って、私の頭の中には、「一緒に作る」という視点が抜け落ちていた。ドラマの中の春日さんにしても、最初は「食べたい人」のはずだったのに、ストーリーが進むにつれて、「作ってみたいです」などと言うようになり、好奇心が芽ばえて来た。食べたいだけの人とお見受けした春日さんが、野本さんに感化されたのか、作りたい人に近づいてきた予感がする。春日さんは、食材を見せながら、「これって、どうやって食べたらいいのですかね」と野本さんに尋ねる場面が劇的に増えた気がする。

 春日さんは探求心旺盛で、「やってみたい」気持ち満々で、目を輝かせている。どうやら、「作る」のと「食べる」のとの両方の幸せを手に入れたいようなのだ。普通なら、作るのは面倒臭いので御免被りたいのに、そのできればパスしたい部分も含めて、何でも自分でやってみたいという衝動に駆られているかのようだ。料理を作ることは、春日さんにとって、まるで「未知との遭遇」だ。そう言えば、ドラマなどで、よく、子どもが母親に作ってみたいとねだる場面があるが、あの時のような純粋な好奇心を垣間見た気がする。春日さんは、野本さんと出会って、美味しいものがお腹いっぱい食べられる幸せを享受している。だが、それだけではない。自分でも思ってもみなかった作ることに対する好奇心という副産物まで付いてきたのだ。

 考えてみると、私は今まで、誰かと一緒に料理を作るという行為をしたことがなかった。要するに、私は「作る人」と「食べる人」のうちのどちらかだった。そのことを別段、疑問に思ったことなどなかったが、そうか、両方もありなのだ。ドラマの中で、野本さんは「じゃあ、一緒に作りましょう」と春日さんに声をかける。もしかしたら、そうやって二人で作って食べて、幸せを感じることは、どんな高級なレストランで食事をするより尊いことなのかもしれない。二人で共有する時間はなにものにも代えがたい、かけがえのない時間なのだ。お金では決して得られない至福の時と言えるだろう。

 そう言えば、作家の綿矢りささんが、日経の夕刊の「交友抄」というコラムに書いていた。青山七恵さんと先日家でハンバーグを作って食べた、と。青山さんは綿矢さんの親しい友人で、ひき肉のこね方にしても、几帳面な性格が出るらしい。一方の綿矢さんは青山さんとは正反対のおおざっぱな方で、ひき肉に入れる調味料の量を間違えて多く入れてしまった。だが、そんなときも青山さんは沈着冷静で、慌てることなどなく、何ごともなかったかのように対処してくれた。何のことはない、二人で作ったハンバーグは美味しく焼き上がり、とても美味しかった、とのことだ。

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