人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

パウンドケーキ

春日さんの思いがやっと明かされる?

 NHKの夜ドラ『作りたい女と食べたい女』が気になってしようがない。ちょうど今最高に盛り上がっているところで、今までとんとわからなかった春日さんの本当の気持ちが一気に明かされそうな大事な局面に来ている気がする。野本さんがバレンタインデーに春日さんに食べてもらおうと、パウンドケーキを焼いている。本当はチョコとかクッキーでもいいのだが、それでは物足りない気もする。なので、チョコのパウンドケーキにしたのだが、あれは好きなものをなんでも放り込んで、型に流し込めばいいので失敗がない。私が学生の頃よく作ったのは、干しブドウ、オレンジピール、チェリーピール、アンゼリカなどを生地の中に放り込み、混ぜて型に流し込んだタイプで、しっとりした触感が好きだった。

 たまに板チョコを湯煎にかけて溶かし、柔らかくなったチョコをそのまま生地に練り込み、型に入れて焼くと、チョコレートケーキの出来上がりだ。当時は湯煎をしても、簡単にはチョコは柔らかくならなかったが、後になって、ドライヤーでやれば一発で済むと知って、「早く言ってよ」となったが、もう遅かった。そんな裏技を知ったところで、もはやお菓子作りへの情熱はとうの昔に消えている。なぜこんなことを言うのかと言うと、野本さんがオーブンの中から取り出したパウンドケーキが昔作ったそれとあまりにも似ていたから。もっとも生地の中身は雲泥の差があると思うが、それくらいパウンドケーキは、誰にでも、簡単に作れて失敗する心配がないレシピだった。

 SNSで知り合った女性とオンライン飲み会をしながら、「春日さんに告白するのが怖いけど、でも言わずにはいられない」と悩みを打ち明ける。そんなとき、突然アパートが停電になり、隣に越してきた南雲さんと、春日さんと3人で少しの間過ごすことになった。3人のうち春日さんだけが、ろうそくの用意をしていた。さすがに春日さんは本当によく気が付いて、備えを怠らない人だと感心する。その時の二人のやり取りをそばで見ていた南雲さんは、あることに気付いてしまうのだ。南雲さんは自分の部屋に戻るとき、春日さんに「私の勘違いかもしれないのですが、二人は付き合っているのですか」と尋ねる。

 ガ~ン、ここで、二人の仲は第3者が気付いてしまうほどに特別な雰囲気に包まれているのだろうか、と訝しく思う。ただの友だちにしては相手への思いが濃密過ぎるのだろうか。その思いは友情ではなく、異性への愛情に近いものなのだろうか。野本さんは「私は春日さんが好きなんです」という時、そこには人間として好きという意味はなく、同性として好きという意味で、それは間違いなく恋愛感情なのだ。私はレズビアンではないので、その真摯なまでの思いを理解することはできそうにない。ただ、人を好きになることはその人の自由で、同性を好きになることを否定するつもりはない。

 それに、私がこのドラマを見続けているのは、一緒に料理を作り、好きな人とお腹いっぱい食べて、二人で幸せだねえと言い合える場面が大好きだからだ。昨今は何でもネットで買える時代だが、そうたやすく、「好きな人と幸せだねえ」と言い合える関係はなかなか成立しないだろう。簡単に手に入れられそうで、実のところは難しい。何か事情があったり、そんな気分ではなかったり、疲れていたりと、至福の時を阻むものは五万とあるのだから。このドラマはある意味ユートピアを私たちに見せてくれている。現実では体験することがかなわないであろう、夢の世界に誘ってくれているのだ、とそう思っている。しかも、このドラマの原作は漫画で、大変失礼な言い方だが、「どうせマンガでしょう」とか「漫画だから何でもありでいいじゃない」などと思うこともある。だが、今の私はそんなことはどうでもよくなっていて、純粋に『作りたい女と食べたい女』のドラマの世界にどっぷりと浸かり、楽しみたい、ただそれだけなのだ。

mikonacolon