人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

料理研究家の本音に仰天

「同じ料理を一日中食べ続けなければならないんです」

 TBSラジオの『宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど』を毎週楽しみしている。先日のゲストは料理研究家の人たちだった。私が持っている彼らに対するイメージは、料理が何より好きで、それを仕事にしているのだから、さぞかし毎日至福の時を過ごしている人たちで、そうだと信じて疑わなかった。世の中の奥様たちが毎日の献立に頭を悩ましている現状を考えると、彼らは雲の上の人で、ありえない人だった。なぜなら、私などは毎日の3度の食事作りだって、隙あらば手を抜き、時にはなんとか逃げ出す方法がないものかと思案しているのだから。

 毎日の食事作りに加えて、仕事で料理を何品も作るのだから、嫌々やっているわけでもないのは確かだ。楽しいからやっているに違いないと羨ましいくらいの気持ちで見ていた。ところが、MCの宮藤さんに「では、さっそく愚痴をお願いします」と言われると、開口一番「レシピづくりでは一日中同じ料理を食べ続けなければならないんです」と宣った。当然聞き手の宮藤さんや我々は一瞬、「どういうこと!?」と訳が分からなかった。立派な料理研究家といえども、やはり試行錯誤からは逃れられないものらしい。例えば、加熱時間が5分でいいのか、10分でいいのかと言ったことは、どうしても自分で食べてみなければわからない。そうなると、自分だけでは足りなくて、試食のための人手が必要になる。そこで手っ取り早いのが夫とかで、家族だ。

 私も初めて知ったのだが、料理のレシピと言うのは、プラモデルで言えば、設計図のようなものらしい。ある料理を作るために必要な材料や調味料の分量、完成までの手順が詳細に書かれているのがレシピで、誰が作っても、同じように出来上がらなくてはならない。しかも美味しくなければだめなのだ。たとえ、自分で完成したつもりであっても、仕事先に持って行くとダメ出しを食らうことがある。それは先方が必ずその場で作ってみて美味しくできていないとOKを出さないからだという。

 ある意味、レシピづくりは化学の実験のようなもので、ああでもない、こうでもないと試行錯誤して、やっている当人はなんだか楽しそうに見えるが、それはとんでもない勘違いだった。自分で何度も何度も味見をするので、時には深夜にまで作業が及ぶこともある。家族が寝静まった深夜にせっせと料理し、試食をくり返す姿を想像するとなんだか複雑な気分になる。やはり、料理はそんなに簡単なものではなく、奥が深く手ごわい。そんな涙ぐましい努力の甲斐あって完成したレシピだが、当の料理研究家にとっては、もう飽きてしまって当分食べたくないのだというから皮肉なものだ。

 彼らによると、今一番必要とされているミッションは、「早くて簡単で美味しい」レシピの開発だ。要するに今の世の中の料理レシピの主流は「時短」で、電子レンジを使った誰がやっても、失敗のないレシピが人気なのだ。だが、料理研究家の彼らにとってはこれが意外にも難しいというから、悩ましい。要するに電子レンジは食材の表面にマイクロ波が当たって加熱される仕組みなのだが、それがどうやら均一ではないらしい。そのため何回も同じことをくり返すのだが、毎回結果が同じではないらしい。レシピというのは完全でなくてはならない設計図のようなもの、なので、なかなか完成に近づけない。「簡単で美味しいレシピの開発が一番難しいんです」という発言には目から鱗だった。「簡単」を生み出すために、こんなにも研究開発された成功例が世の中に出回っているのを知ったら、なんだ感謝したい気分にもなる。

 それから、驚くべきは料理研究家が台所で使っている調理道具の数で、彼らのひとりは友達の家に遊びに行って「あれ~っ?」と不思議に思った。なぜかと言うと、台所にボールが2つしかなかったからだ。自分のところにはボールなんて、何十個も、そうだ30個ぐらいはあったし、お玉だって、それくらいはある。また炊飯器も仕事柄、7個くらいはあるし・・・っと、そう宣うのでMCの宮藤さんはもちろん私も、ありえない状況に笑いが止まらない。そうか、料理研究家の人たちにとってはそれが当たり前なのだ。

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