人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

噂の家族のお昼はそうめん

今週のお題「そうめん」

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 家族全員で同じ職場で働くということは

 先日近所のスーパーに行こうとして、小学校の前を通りかかったら、子供たちの楽しい笑い声が聞こえてきました。ふと見たら、植木鉢に植えられている何かを取り囲んで水をやっている姿が目に飛び込んできました。たぶん、朝顔かなんかだなあとすぐに思いました。私たちの頃は子供が育てて観察するものと言ったら、朝顔が定番だったからです。気になって買い物の帰りに学校の柵の隙間から覗いてみました。そしたら私の予想は大きく外れていました。ギザギザの葉っぱのミニトマトと何かはわからないのですが別の野菜でした。もしかしたらナスなのではと思いましたが、紫色ではなく緑色の木なので見当がつきませんでした。何日か経ったある日また覗いてよく観察してみると、何か小さな緑の実が2~3個生っていたのです。まさかのピーマンでした。

 「ええ~?!子供がピーマンが大きくなるのを喜ぶのだろうか」これがその時の正直な感想でした。ピーマンは苦いから子供には嫌われているとばかり思いこんでいたからです。だからミニトマトとどちらを選ぶかとしたら絶対ミニトマトだと決めつけていたのです。でも並べてある植木鉢をざっと見渡して見たら、ピーマンとミニトマトの数は同じくらいでした。考えてみると、世の中にはトマトの嫌いな子供はたくさんいるのでした。そのことをすっかり忘れて、ついつい自分の固定観念でしか物事を見られませんでした。自分が普通だと信じて疑わなかったことが、他の人たちにとってはどうもそうではない、そのことに気づかされた経験をしたことがあります。

 あれはまだ学生の頃、郵便局で早朝のアルバイトをしていた時のことです。朝一番で全国から局に到着した郵便物を手早く仕分ける仕事でした。学生や主婦や高齢者などたくさんの人が働いていましたが、その中でひときわ目を引いたのは家族3人で一緒に作業をしている人たちでした。最初はあの人達は仲がよさそうだとばかり思っていた私は、職員から家族だと聞かされて仰天しました。「家族で同じ職場で働くなんて、考えられないよね。俺は嫌だなあ」

 職員もそう言っていたし、私も「そんなのありえない!」と拒否反応を起こしました。でも、目の前にはなんら気にすることもなく、おそらく家に居るときと変わらずに振る舞う家族がいることも事実なのです。彼らは職員や私、いいえ、彼ら以外の人たちのようには考えないのです。彼らは役所をすでに定年になったご主人とその妻、結婚していないアラフォーの娘さんの3人家族でした。噂によると、娘さんは局の職員と付き合っていて、結婚するとかしないとか。「でもあの人には奥さんがいるでしょう」と誰かが口を挟んだら、「離婚するから大丈夫よ」と別の誰かが反論しました。そんなありえない家族の話題で休憩の時は盛り上がり、「ご主人もいくら健康にいいからって、奥さんや娘さんと一緒のところで働かなくてもよくない?」と話が途切れることはありませんでした。

 3人の住んでいる家はどう見ても豪邸で、親子3人でアルバイトをしなければならない境遇にはとても思えないと皆が言うのです。皆が噂する一番の原因はアラフォーの娘さんで、プライドが高すぎて評判が良くなかったのです。職場の人たちから敬遠され、彼女の発言や行動はたちまちのうちに噂になってしまいます。「今日は仕事中に3人でお昼は何を食べるかなんて話してたよ」。「奥さんが暑いからそうめんにすると言ったとたん、娘はまたぁ!だって」と仲間のひとりが笑いました。それから「いつもそうめんを美味しいと言って食べるでしょう、じゃあ何がいいの?と奥さんに言われたら返す言葉が見つからないみたいだった」と呆れていました。こんなふうに日常的に家族の井戸端会議を見せつけられているのですから、何か不思議な感覚に襲われてしまいます。何か公私混同をしているように錯覚してしまうのですが、当の家族3人は果たして違和感を感じることはなかったのでしょうか。職場の人にまるで家族のひとときを公開しているかのような、少し後ろめたい感情が人間にはあると思うのですが。

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