人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

歯医者を卒業したい

今週のお題「卒業したいもの」

 

いつまで続くのか、歯科治療の先は見えない

 まことに恥ずかしい話だが、歯医者と縁が切れない。一日も早く、歯医者を卒業したいと熱望し、日々歯磨きに精を出している。とは言っても、私の場合は一日に一回寝る前、いや、夕ご飯を食べた後に念入りに歯磨きをするだけだ。本当は食べた後に毎回やるのがベストなのだとわかっているのだが、面倒でできない。私の歯磨きのやり方は、まず電動歯ブラシで磨き、歯の表面に付いている食べかすを落とす。その後、歯間ブラシを使って歯と歯の間に溜まっている、歯ブラシでは落とせなかった食べかすを取り除く。さらに、今度は細い歯間ピックを歯と歯の間に差し込むと、まだまだ小さな食べかすが残っていることが多い。それで終わりかというと、まだまだで、念には念を入れて、フロスで歯と歯の間をくまなく掃除する。

 以前通っている歯医者の先生に、「あくまでも歯間ブラシは歯周病予防で、虫歯に効くのはフロスなんですよ」と予想外のことを言われて衝撃を受けてしまった私は、それ以来フロスを欠かさない。もっとも、薬局に売っているフロスは私には上手く使えなかった。それで、昔使ってはいたが、今は必要なくなったミシン糸で代用することを、勝手に思いついた。ミシン糸は、綿、絹、ポリエステルと何種類もあるが、一番使いやすいのはポリエステルだと気が付いた。とにかく、食べた後食器を洗うのが当たり前のように、歯の汚れを落とすしかない。ただ、食器と違って、歯の中はよく見えないので、これくらいなら大丈夫と確信が持てるまでやらなければならない。その目安は糸に食べかすが付かなくなるまでが基本だ。それが今の私にできる精一杯のことで、それぐらいしか術がない。

 以前、日経新聞のエッセイで、作家の小今田奈月さんがフロスを毎日やったら、歯医者の先生に褒められたと書いていた。信じられないほどに、歯茎が引き締まり、虫歯の心配はないと太鼓判を押されたらしい。その時は俄かに信じられなかったが、最近定期検診に行ったら、歯医者の先生がたいそう機嫌がよかった。いつも辛口のあの先生が、「今日は歯茎が硬いですねえ」などと耳を疑うことをおっしゃるのだ。いつもは滅多にやらないのに、ゴムが付いた器具を持ってきて、私の歯と歯の隙間に次々と差しながら「わあ~、いいなあ、いいですよ」などと言っている。私の今の歯茎は固くて、まさに最高の状態だと感心しているのだ。こちらはなんだか落ち着かない。その日の先生は別人のようだからだが、内心、フロスのせいだろうかとも思った。

 ところが、歯茎の状態はいいのだが、昔入れた差し歯が少し緩くなったようで、歯と歯の間に少し隙間ができていた。歯と歯に隙間があると、虫歯になりやすいようで、それは差し歯であっても中にある自分の歯が危ないのだ。要するに、また1週間後に治療を始めなければならなくなった。ついでに「借歯の型も取っておきましょう」と言われる。できるだけ通う回数を少なくするためで、先生はそのへんのところは抜かりなく、上手く行けば、3回ほどで新しい差し歯が入る予定だ。柄にもなく褒められて当惑していた矢先に、なあ~んだ、またか!と歎きたくなった。

 これでも以前と比べたら、通う回数は激減したほうで、毎週のように通っていた時は、正直嫌になって逃げたくなった。面倒臭いのと情けないのとで、「死んでしまえば、もう通わなくてもいいのに」などと、不謹慎極まりないことを考えたこともあった。歯の治療が面倒で、死んだら楽になれるだなんて、今にして思えば、大馬鹿者である。命に関わる病気でも何でもないのに、どうしてそんな発想に至ったかというと、おそらくメンタルを病られていたからだ。要するに、歯医者に行く度に、虫歯が見つかり、そして、ある歯を治療中している間に他の歯の虫歯が進行すると言う現実に怯えていたからに他ならない。自分ではどうにもならない事実に私はじっと耐えるしかなかった。

mikonacolon