人生は旅

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死ぬまでにしたい10のこと

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余命2カ月を告げられた女性の日々を淡々と

 動画サービスで映画「死ぬまでにしたい10のこと」を見ました。レヴューには、お涙頂戴の場面が全然なくてイマイチ感動しなかったという意見もありました。ヒロインのアンが自分の死に対する恐怖をひたすら隠すので、余計誤解されてしまうのでした。ただ、誰にも自分の病気のことを言えない彼女は「経験したことがないほどに孤独」だと認めています。なぜ、周りの愛する人たち、二人の娘たちや夫、母親、友だちに隠すのか、それは事実を知らせたら悲しませるだけだからと考えたからでした。第一に考えたのは娘たちのことでした。できることなら彼らを悲しませたくない、でも自分が死んだら悲しむことはわかっている。それでも悲しみに沈んだまま毎日を過ごしてもらいたくない、いつも笑って幸せでいて欲しいのです。

 だから彼女たちが悲しみから早く立ち直るために「新しいママを見つける」ことが必要なのでした。娘たちが病気で死んだ母親のことなど早く忘れて、新しい母親に懐いて欲しいと真剣に願いました。アンが深夜のカフェでノートに書いた「死ぬまでにしたい10のこと」の3番目がこの「新しいママをみつけること」でした。娘たちには悲しい思い出は必要ないと、どこかのドラマのように「ママを忘れないでね」などと湿っぽいことは言わないのです。すると、都合よく隣の空き家に自分と同じ名前の女性が越してきました。早速、アンは彼女を巻き込もうと娘たちの子守を頼んで出かけてしまうのです。幸運にも彼女は気さくで子供好きだったので、新しいママの候補としては十分でした。自分の死後、彼女が夫や娘たちと仲良く暮らす姿を想像したら、とても穏やかな気持ちになりました。

 その一方で、毎晩のように車の中で、何やらカセットテープに自分の声を録音しています。それは娘たちに宛てた誕生日のメッセージで、二人の娘にそれぞれお祝いの言葉と励ましと自分がどれだけ愛しているかを伝えているのでした。なんとそのテープは彼女たちが18歳になるまで作られて、主治医に託されることになりました。彼女は娘たちが年齢ごとに成長した姿を想像して、自分がその場に居ないのを承知で話かけているのでした。現実にはいない母親のメッセージを聞いて娘たちはどう感じるでしょうか。たぶん今は居ない母親の声や自分たちを想う言葉は最高の贈り物となるはずです。

 一番驚かされたのは、10ある願い事のうちの7番目と8番目です。7番目は「夫以外の人と付き合う」であり、8番目は「男性を夢中にさせる」でした。これには正直言って「どうしてこんなことを?」と不可解でしかありませんでした。夫婦仲もよく、夫に不満があるわけでもありません。でも17歳で一人目を産み、19歳で二人目を産んでこれまで自分の人生を疑うこともなく生きて来た彼女にして見れば、ふっと湧いた好奇心のような感情なのでしょう。自分の命があと2か月しかないとわかったら、思いっきりドキドキワクワクしてみたい、そう思ったとしても誰にもとやかく言われなくていいのです。どうせもうすぐ死ぬのですから。アンはまだ23歳で若くて美しい女性なので、望み通り恋の相手と深夜のカフェで出会い、彼を夢中にさせてしまいます。

 この映画の中で、アンはそれでも子供が二人もいる人妻?と疑いたくなるほど自由に行動します。ドラマによく登場するお決まりの嫉妬深い夫もでてきません。特に深夜に自由に動き回るのは、ホテルで清掃の仕事をしているからで、恋人の部屋で過ごすことも可能なのです。失われた青春を取り戻そうと急いでいるかのように恋に落ちていくアン、彼女は夫の前でも後ろめたさなど微塵もありません。それはたぶん、彼女が「死ぬまでにしたいこと」のリストに載っていることだけに集中しているからです。目的がクリアなので周りがどう思うかなんて気にする暇がないのです。考えてみると、抗うことができない死を突き付けられたら、誰だって自由に生きたいと思うものなのです。

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