人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ホテルの近所で惣菜店を発見するが

世界は脱プラスチックの方向に

 夜中にトイレの水漏れと格闘した私は、その疲れもあったのか、目を覚ましたら、すでに朝の8時だと知ってびっくりした。ホテル・マリアンヌの私の部屋は1階だが、窓が大きく外の様子がよく分かった。なのに、外はまだ真っ暗だった。後でわかったのだが、パリでは9時をすぎないと明るくならない。朝の7時を過ぎれば、明るくなるのが普通の日本とは大違いで面食らった。少しゆっくりしたいと思っていた私だが、さすがに時計を見て8時だと知ったときは焦った。いくら何でも、せっかくパリに居るのに朝寝坊するとは何たることか、と自分を呪いたかったが、そんな無駄なことはやめておいた。急いで支度して、朝食ルームに行くと、さすがにもう皆が朝食を終えたところで、誰もいなかった。

 宿泊サイトの口コミでは誰かが、「素晴らしく美味しい朝食」と絶賛していたが、なんのことはない、ごくごく普通のパンとコーヒーの朝食だった。コーヒーはマシンのボタンを押せば、好みのもの選べるし、他にはヨーグルトと、リンゴやオレンジなどの果物が置いてあった。パンは定番のクロワッサンなど数種類が入っているかごが置かれていたが、その中で人気があって、たった1個しか残っていなかったのが、シナモンロールだった。皆シナモンロールがそんなに好きなのかと意外に思った。朝食ルームから、チラッと庭が見えて、もし望めば、テラスで朝食をとることも出来そうだが、どう見ても猫の額ほどの広さしかない。なのに、どうして「美しい庭での朝食」となるのか理解に苦しむ。口コミが事実とこんなに違っていいものかと呆れ果てる。

 口コミの評価はさておき、このホテルのロケーションについては何も言うことはない。このホテルの周りにはカフェもあるし、様々な飲食店もあり、それに一軒隣には私のような旅行者が喉から手が出るくらい求めていた惣菜店もあった。夕方その店を発見した時は、「おや、こんなところに有るじゃない」と喜びを隠せなかった。だが、ようく見てみると、10種類以上ある総菜のトレーはほとんどが売れ残っていた。つまり、あまり美味しくないから、人気が無いのだ。おそらく値段も高いのだろうが、私に限っていえば、日常をきっぱり忘れて、美味しければ、喜んで高くても買うのである。どれ一つとして売れていないのを察知し、店の中へ入る気も失せて、早々に立ち去った。夢破れ、ぬか喜びに終わった瞬間だった。だが、初めからパリで美味しい物を食べようだなんて考えは微塵もない私は、たいしてダメージもない。

 モノプリというスーパーにも行ったが、昔の事はあまり言いたくないが、以前と比べて総菜売り場が縮小していて、寂しい限りだ。私の口には合わないが、それこそ何十種類もの色とりどりのサラダや総菜がショーケースに並んでいたはずで、それを買う人はほとんどが観光客だった。地元の人は滅多にスーパーには行かないで、市場で買い物をするのが普通なのだと知った。要するに、スーパーは何でも値段が高めだからと敬遠し、パンに至っては、土曜日の夕方になると、皆一斉にパン屋の前に並んで長蛇の列ができた。彼らが買うのは一本100円のバゲットで、それも何本も買って帰るのだ。

 私はスーパーには水を買うために行ったが、水分補給のためにオレンジも3個ほど買った。日本とは違って1個から買える。自分で好きなものを選んで袋に入れて、はかりの上に置き、果物の番号を押すと、ラベルが出てくるので、それを貼る。ラベルには値段が表示されていて、3個で53セントで、日本円にすると、80円くらいでとても安い。何でも高いパリにあって、果物の値段の安さにはホッとする。今回気が付いたのは時代の流れで、果物を入れる袋がビニールではなく、紙の袋になっていたことだった。それも茶色い紙の袋なのだが、窓枠がある封筒のように、少しだけビニールの部分があって、何のためかと言うと商品が見えるようになっていた。現在の世界の潮流としての脱プラスチックの流れをひしひしと感じた。事実、フランスのスーパーにはレジ袋はなくて、紙製だった。それに日本のスーパーに置いてある、魚や肉のパック、豆腐や白滝などを入れるのに便利なあの薄いビニール袋がどこにもなかった。日本にいると、なかなか感じにくい世界の今を感じることができた。

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