人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

DIE WITH ZERO

買ったのに、すっかり忘れていた本

 この本『DIE WITH ZERO』は、最近新聞の広告を見て、なんだか良さそうだと興味をそそられた本だった。本屋に行って実物を手にとってみたいけど、なかなかその機会に恵まれなかった。先日も大型書店にドイツ語の勉強のためのNHKのテキストを買いに行ったのに、その時は本屋大賞の発掘部門で30年ぶりに日の目を見た井上夢人さんの『プラスティック』のことしか頭になかった。なので、いったいいつになったら、お目にかかれるのか、定かではないが、それほどこの本に会いたいという欲求に駆られることはなかった。

 実を言うと、私の机の横には本棚があって、そこにはある一冊の本が書店のカバーが掛かったまま眠っていた。カバーが掛けられているおかげで、その本は私に何も訴えてはこなかった。その本はいつ買ったかさえも思い出せないし、タイトルさえもわからない。ただ、確かなことはその本が啓発本であり、読んでみたところ、あまりに書いてあることが理想的すぎて、実行するまでには至らないと言うことだった。短絡的な見方をすると、ズバリ、何の役にも立たない、という結論に達した。要するに、その本に書いてある通りにしようとすると、人生最大の決断を下さなければならない。清水の舞台から飛び降りるがごとく、それこそありったけの勇気を出さなければならないのだ。そんな自分を想像すると、清々しくて、かっこよくもあるが、それは映画やドラマの中だけでいいと思えてくる。現実の自分はもっとおどおどして、ジタバタして、かっこ悪く生きているのだから。

 要するに、その本を読んだ当時は、こんな生き方ができたらなあ、くらいに思っていたらしい。勇気を出して、飛んでみたなら、飛ぶことができたなら、きっと今とは違った毎日がドキドキワクワクの人生が待っているのかもしれない、などという叶うことがない夢を見ていたのだろう。ただ、今でも覚えているのだが、そのためには自分が持っているお金をそのまま眠らせておくのはもったいない。是非とも投資に回し、積極的に運用することを勧めていた。そこで、私としたら、なあ~んだ、結局そのことを言いたかったのかと夢から覚めた気分になった。そう思った瞬間、全く興味のカケラさえもなくなって、本棚にポイと放り投げた。そうやって昨日まで見放されたままずうっとそこで眠ったままだった。

 そんなことをすっかり忘れていた私は、切り取った『DIE WITH ZERO』の新聞広告を見ながら、それについての私見をブログに書こうとしていた。まだ1ページも読んでいないのにも関わらず、最近やけに聞こえてくるマスコミの噂から容易に想像できることを自分なりに書いてみようと思った。だがその時、ふと本棚にあるカバーが掛かった本のことが気にかかり、何げなく、見てみたら、仰天した。なんと、そこにあったタイトルは『DIE WITH ZERO』で、我ながら飛び上がるほど驚いた。まさか、すでに買っていたとは、お釈迦様でもご存じない、いや、そうではなくて、もしかして、また買ってしまう危険性だってあったのだ。何とおめでたいのだ、私は!と思わず笑い転げた。

 そう言えば、先日新聞を読んでいて、見かけた衝撃的なフレーズがある。それは、「一番可哀そうなのは、老後のお金が全くない人ではありません。何千万も残して死んでいく人です」という専門家の見方で、ある意味もっともな意見である。この本の中でも、「高齢者は溜め込んだお金を使わない」と明記されていて、それでは”あなたの一生はただ働きと同じです”と鋭い視点を投げかけている。なぜ、あなたはあなたが稼いだお金を自分のために使わずに死ぬのですかという究極の質問だ。そう尋ねられたら、私などはそれはその通りだが、かと言って、ゼロで死ぬのは難しいに決まっていると困惑するばかりだ。だから、あまり理想を追求しようとは思わず、身の丈に合ったお金の使い方をするしかないのである。ただ、この本を読んだことで、自分が忘れていた夢を少しの間思い出し、”積極的に生きる”という希望を貰えたことには感謝したい。

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