人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ドラゴンフルーツ  ⑥

なぜやりたくもないのに、続けるのだろうか

 闇夜に光る明かりを頼りに「夜中に一体何をしているのだろうか」を突撃取材する番組『不夜城はなぜ回る』が面白くて毎週録画して楽しんでいる。今回の舞台となるのは鹿児島県日置市で、暗闇の中をなんと4時間も捜し回ったが、見つからない。それでもリポーターの大前さんは暖かいので苦にはなりませんと前向きな発言をする。そうこうしていたら何やら遠くに家の灯りが見えて来た。早速取材交渉をするも、その家の奥さんに怖がられてしまい、なかなか思うようにいかない。初めのうちは話を聞いてもらえなかったが、テレビの取材だとわかると快く承諾してくれた。奥さんの話によると、辺りは過疎地でよからぬ人たちが出没するらしく、普段から警戒しているとのこと。

 なぜこんな夜中にあかりがついているのか、そして一体中で何をしているのかと率直に疑問をぶつけた。すると、今さっき御主人が仕事から帰ってきたばかりだった。その仕事とは一体何なのか、それをどうしても知りたいと訴えたら、親切にも仕事場に連れて行ってくれるという。ご主人の浜上さんの運転で車で10分ほど行った先はビニールハウスだった。その中でいったい何を栽培しているのかと思ったら、それはドラゴンフルーツ。

 浜上さんが夜中に出掛けるのは育てているドラゴンフルーツの花の受粉をするためだった。なんでもドラゴンフルーツの花は夜しか咲かないらしく、そのため浜上さんは夜中に仕事をせざるを得ない。ドラゴンフルーツはホワイト、レッド、イエローと3種類あるが、中でもイエローは希少価値がある。浜上さんはそのイエロードラゴフルーツを手掛ける名人だ。普通の人がやってみてもなかなか実がつかないらしい。そのイエローの花は神秘的で美しい白い花が咲くという。残念ながら大前さんが取材した時は時すでに遅く花は萎んでいた。ドラゴンの花が開く間を狙って刷毛のようなもので受粉させて実をつけるようにする、それが浜上さんの大切な日課だった。今日咲いたら今日受粉しないともう手遅れで、明日はもう無いという。

 「虫がやってくれるのではないのですか」という大前さんの質問に、「うちは農薬は撒かないので、虫はいっぱいいるけど、受粉はしない」と言うので仰天した。ずいぶん手のかかる植物なのだ。不夜城の理由はドラゴンフルーツの花の受粉をするためだった。でも、よくよく話を聞いてみると、ドラゴンフルーツの栽培は元々やりたかった仕事でもないし、いつ辞めてもいいと思っていると言うので困惑した。流れ流れてこの仕事に行きついたというのが本音らしく、過去にはレストランや喫茶店も何店舗か経営したこともあった。すべて奥さんがやりたかったことらしく、その奥さんは現在ガンの末期で闘病中だった。

 浜上さんは夜中の受粉作業の後、市場にドラゴンフルーツを出荷して一日の仕事を終える。てっきりこの後は家で休むのかと思ったら、なんと高齢者の仲間とテニスをするというので大前さんも付き合うことになった。実を言うと、私はドラゴンフルーツをまだ一度も食べたことがない。どんな味がするのだろうと興味津々なので、ネットで検索して調べてみた。サイトにはドラゴンフルーツについて、「酸味がなく、甘さをしっかりと感じられる味わいが特徴です。果肉は柔らかく、サクッとした食感です」とあるにはある。実際には、「味がハッキリしなくて、甘味が一向に感じられない」と浜上さんのテニス仲間の女性は不満を漏らすが、「浜上さんの持ってきてくれるドラゴンは最後まで美味しく食べられる」と喜んでいる。要するに、他の物とは一線を画すのだと言いたいらしい。

 元々は息子さんが10年前に障害者施設をやっていて、彼らに仕事をさせなきゃならないとドラゴンフルーツの農園を始めたのがきっかけだった。3年前に息子さんは施設をやめてしまったが、なぜか今でも続けている。浜上さんははっきりとは口に出さないがその辺のところにもやり続ける理由が隠れているような気がする。まあ、あくまで私の推測に過ぎないのだが・・・。

mikonacolon