人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

車内で人間ウオッチング

車内はさながら満員電車のようで

 田舎の実家に帰省したら、行きは良かったが、帰りはトラブルに直面したことはすでに書いた。あの時、どうしたら一番よかったのかと今になって思うと、あの時の決断がベストだった。とにかく、家にその日のうちにたどり着けたのだから幸運だった。思えば、あの日のお昼近く、テレビのニュースの「運転再開には相当の時間がかかると思われます」との報道を真に受け、きっぱりとその日は家に帰ることを諦めた。実家にもう一泊することにして、余裕だったはずなのに、急にこれから先どうしたらいいのか不安になった。こんな緊急時となると、そんな事態に遭遇した経験のない私はなす術がない。家でのんびりとしてはいられなくなって、義姉のミチコさんに車で最寄り駅まで連れて行ってもらう。

 駅に着くと、すぐに窓口に並んで、順番を待っていたが、なかなか列は進まない。そのうち、自動切符売り場で職員が対応しているの見つけて、聞きに行く。もちろんその間、ミチコさんに列に並んでもらっていた。職員に自分がどうすればいいのか教えて貰った後、ミチコさんのいるところに戻って驚いた。いったいどうなっているのか、まったくと言っていいほど人が動いていない。普通に考えれば、払い戻しなんてそんなに時間がかかるものなのだろうか、いや、それより代わりのチケットを取るのが困難なのなのかもしれない。それに、慌てて列車の発車駅に行ってみたら、みどりの窓口が人で溢れているのを発見したときも、いったいこれは何事?と仰天した。なぜならいつもは閑古鳥が鳴いているのだから。もちろん、払い戻しとかのためだろうとはわかってはいるが、昨今は皆列車の予約はネットでするのが普通だろう。

 それなのに、アナログとでも言える窓口に列を作るだなんて、おかしいではないか。当然払い戻しも、再予約もネットでできなければ意味がないのだが、おそらくアクセスが集中して、全く繋がらないのだろう。なので、長蛇の列に並んで自分の順番が来るのをひたすら待つしかなす術がないのだ。私が最寄りの駅で職員に聞いた時も、「ICカードで乗車の場合は、窓口だと、認証コードを発行しなければならないので、時間がかかります」とPCやスマホでの処理をお願いされてしまった。ネットは今回のような緊急時には全く役に立たないものらしい。

 さて、私は指定席を取った列車をあと1時間早かったら、乗れたのにという残念な思いで次に来る電車を混雑したホームで待っていた。なんとか乗り込んだものの、車内はさながら満員電車のようで、仕方がないので座席の方を向いて立っていた。すると視線は自然と目の前の子供連れに吸い寄せられた。二人席で夫婦の間におそらく1歳ぐらいだろうと思われる男の子を座らせていた。母親と父親はまだ30代だろうと思われる若い夫婦で、乗り込むと、3人はすぐに保冷バッグから取り出した弁当のおにぎりを食べ始めた。まあ、何でもない親子連れの風景だが、その男の子がまたよく食べ、よくしゃべって、とても活発だった。その子の何でもない所作を観察していたら、退屈が紛れたたことは確かだった。ふと周りを見渡すと、隣に立っている背の高い女の子達は二人共、じっと手元を見ている。どうやらスマホを見ているらしく、こんな時はスマホが大活躍する。

 また、親子連れに視線を戻すと、おにぎりを食べ終わった男の子に親がスマホを与えて、どこかで見たことがある犬が登場するアニメを見せる。すると、男の子は急に大人しくなり、じっとスマホの画面を見ている。そこで、両親は自分たちもとスマホをおもむろに取り出した。母親はゲームを、父親はマンションの間取りのような画面をすぐに開いて見始めた。おそらく、マンションか一戸建てかどちらかの購入を思案中なのか、あるいはすでに決めたのかのどちらかだろう。

 通路につっ立っている私は本を読むことすらできない状況だったので、目の前にある動画のような光景をずうっと眺めていた。もちろん、あの家族は私が最初から最後まで執拗に見ていたことなど知る由もないし、自分たちの行動が「誰かに見られている」という認識はなかったと思う。つまり、それくらい、大勢の視線があの家族を取り巻いていた。

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