人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

フランスに修業に行ったパン屋の話

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野菜たっぷりのピザパンが最高

  「おいしいパンが食べたいなあ」とふと思ったら、昔近所にあったパン屋を思い出しました。5階建てのビルの1Fにあったその店は、店の名前さえ忘れてしまったのに、いつもお昼はお客さんでいっぱいだった光景は浮かんでくるのです。小さい店で、奥では忙しそうにお店の人がパンの製造作業をしていました。そこのパンで一番好きだったのはピザパンで、まるい厚切りのパンに玉ねぎ、ピーマン、ソーセージがのってトマトソースがかかっています。ただのピザパンならどこの店にでもありますが、ここのは野菜の量が半端ではなくて、またその野菜が美味しかったのです。特にたっぷりの玉ねぎが柔らかくて甘くて、パンより野菜が食べたくてピザパンを買っていた気がします。同じものにあれから出会ったことはありません。もう食べられないからこそ、忘れた頃に何気なく思いだすパンなのです。

オリジナリティがお客を呼ぶ

 ここのパンはドイツパンでも、フランスパンでもない、クリームパンやアンドーナツと言ったごく普通のパンでした。どこにでもあるパンのようでいて、店独得の味、つまりオリジナリティがあったのです。だからこそお客さんを引き付けていたのです。でも残念ながら、店の主人がフランスに修行に行きたいので閉店することになったのです。そのことを知っても私は驚きませんでした。以前から、従業員募集の張り紙があって、『パンの製造過程を学んでみませんか、パリへの研修もあります』と書かれていたからです。パン職人なら本場フランスで学んでみたいのは当然です。その気持ちは誰にでも理解できます。実はそのパン屋は店の主人がビルのオーナーで、奥さんは2Fで会社を経営していました。

閉店を惜しむ手紙の数がすごい!

 ある時、閉店した店の前を通ったら、ウインドーに何やら紙がいっぱい貼ってあったんです。「なんだろう、何が貼ってあるんだろう?」と思って見てみると、『ここのパンが好きで毎日家族で食べていました。これから朝何を食べようか、困っています。今までありがとう』。他には『パリから戻ってきたら、また店を再開してください』との早く帰れコールもありました。とにかく皆さんこの店の閉店を心から惜しんでいるようなのです。正直言って、私はこんなに人気があったのだと初めて知りました。あれからもう何年も過ぎましたが、未だに店は再開されていません。きっと店の主人はフランスのパンや文化に魅了されてしまって帰れないのでしょう。

忘れられないサクサクのマドレーヌ

 フランスのパン屋と言えば、パリのモンパルナス駅の近くにあった「メゾン・カイザー」を思い出します。スペインのサン・セバスチャンに行くのにTGVに乗るために駅に行きました。4時間25分の長旅なので何か食べるものを買うために外に出ました。ちょうど朝市をやっていて、総菜やパンや野菜などいろいろなものを売っているのにお客さんがいないので変だなあとは思ったんです。それでも、ラタトゥイユやサラダなど3種類を12ユーロほどで買ったのです。その後見つけたのが「メゾン・カイザー」でいかにもパン職人という店主が奥さんとやっている店でした。そこのショーケースにゴソッと入っていたのがプチマドレーヌで、列車内で食べるまで、その美味しさに気づきませんでした。表面はサクサクで中はふわふわの初めての味、あんなおいしいマドレーヌは食べたことがなかったんです。あのマドレーヌは私を慰めてくれました。なぜなら朝市で買った総菜はどれもおいしくなかったからです。一昨年、パリに行ったので、またマドレーヌを買おうとモンパルナスに行ってみました。でも残念ながら店はもうなかったんです。

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