人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

犬の気持ち

f:id:mikonacolon:20211023192808j:plainボリビア高原で先住民が放牧するリャマ。NHKまいにちスペイン語テキストから。

自由のない生活で毎日犬は何を思う

 先日、いつものように何か面白い句や歌はないかなぁと思いながら、朝日俳壇・歌壇を見ていました。すると、「道草して 草むら情報 欲しいのに 鎖をぐいと 引くから拗ねる」伊勢原市の宇佐美正治さん作)の歌が目に留まり、思わず「言えてる!」と膝を打ちました。選者の方も「この歌の主語は犬で、犬を主語にした、そのアイデアが面白い」と絶賛していました。考えてみると、昔から犬はネコと比べて自由がなかったわけです。一昔前は犬は外で鎖に繋がれて、自由に動くこともできず、気晴らしは散歩ぐらいなものでした。その散歩でさえも、人間の勝手で連れて行って貰えないことも多いのです。雨が降ってるからだの、時間がないからだの、寒いから外に行きたくないなどの理由です。

 それで、犬はいつだって、自由に歩き回るネコを羨ましそうに眺めていたわけです。現代はペットも家族の一員ということになっているので、もう誰も外で犬を飼う人はいないのです。おかげで犬はもう鎖に繋がれなくてもよくなり、家の中で自由に動けるようになりました。でも犬だって外の世界を知りたいわけで、毎日の散歩が唯一の機会なのです。犬のことを考えてくれる、つまり今の言葉で言うと、犬ファーストの飼い主は朝晩の2回必ず散歩に連れて行ってくれます。散歩のときは外の情報をキャッチするまたとない機会なので、「鎖をぐいと引く」なんてことは、できることならしないでもらいたい、それが犬の本音です。散歩のときぐらい、本人、いいえ、本犬の好きなようにさせれくれやと文句も言いたくなるわけです。

 私も毎朝、散歩中の犬たちに遭遇しますが、犬のタイプは2種類に分かれると思います。わき目もふらず飼い主について行く猪突猛進タイプと飼い主より先に行き、自分の好きなように道草するタイプです。それと、他の犬との出会いを楽しみにしている犬もいるのです。犬にもちゃんと好みはあるようで、意中の相手と毎朝必ず出会うようになっています。飼い主さん同士も仲が良いみたいで、彼らが立ち話している間に犬同士もちゃんと情報交換しているのでしょう。

 犬のことを書いてきたら、ふと実家で飼っている犬のことを思いだしました。最近はちび猫のことばかり頭にあったので、先住犬のマルプー、マルチーズとプードルのミックス犬のことを忘れていたのです。あの子に初めて会ったのは兄がガンで亡くなる1カ月前で、犬がいることは知りませんでした。なぜなら先代のスパニエル2匹はすでに死んでいなくなっていたからです。どうやら新たにペットショップで買ってきたようで、その子が引き戸の隙間から覗いていたのでした、それも小さなピンクの舌をペロペロと動かしながら。最初は、何やらピンクの物がせわしなく動いているとしかおもいませんでした。近づいてよく見ると、隙間から毛がクルクルにカールしているぬいぐるみのような白い犬が見えました。自分の目を疑いました。どうしてここの家にこんな犬がいるのかと。

 人差し指を差し出すと、舐めるは舐める、舐めまくる、どうやら人が来たのが嬉しくてどうしようもないらしいのです。親戚の2歳の女の子が何事かと興味津々で近づいてきました。「やってみる?」と聞くと、ちっちゃな指を差し出して、犬に舐めさせ始めました。「くすぐったい!」と言いながらも嫌がるわけでもなく、むしろ「指がベトベトになっちゃった」と喜んでいたのです。父親がその子に「家の犬とどっちが可愛いと思う?」と聞きました。そしたら、考えることもなく即座に、目の前のマルプーを指さしたので、その場にいた大人たちは爆笑しました。でも、ただ一人、その子の父親だけは、「それはないでしょう!」と嘆いていたのを今でも覚えています。

 あの時死を目前にした人を目の前にして、私たちは爆笑していたのです。その時だけはどうにもならない厳然とした事実を忘れた振りをしていました。だから、マルプーとの出会いを思い出す度に、兄を思いだない訳にはいかないのです。

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