人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

見知らぬ人から話しかけられたら

「私、何歳に見えますか」に困惑

 もしあなたが、知らない人から、「私、何歳にみえますか」などと聞かれたら、なんと答えるだろうか。う~ん、確かにこういった類の質問には、本当のことを言っていいのやら、いやいや、2,3歳若い年齢を言った方が相手に対して失礼にあたらないのではと、私などは考えてしまい、答えに窮する。朝日新聞の投稿欄の「あけくれ」に載っていた記事もそんな内容だった。茨城県小美玉市に住む奥谷純子さんは、その日お母さんに付き添って病院の待合室で待っていた。そこへ、ひとりの高齢の女性が近づいてきて、空いている椅子はたくさんあるにも関わらず、奥谷さん親子の隣りに座った。こういう状況の場合、誰でも、どうして私たちの隣りに座るのですか、と内心思うものだ。自然と、「何、この人、変な人」と警戒してしまい、もし話し掛けられでもしたら、面倒臭いことになるとネガティブな発想ばかり浮かんでくる。

 奥谷さんも、御多分に漏れず、そう思ったが、一応、「おはようございます」と挨拶した。すると、それが相手にとってはいいきっかけになったようで、「初対面なのにプライベートなことを、声高に話すものだから、面食らってしまった」と振り返っていた。こんなとき、いい加減にしてください、と言いたくなり、嫌気がさしたとしても、すっぱりと席を立つ行動に出られる人はそうはいないだろう。奥谷さんもその一人で、「席を立つのも面倒なので、適当に話を聞き流していた」のだが、「私、何歳に見えますか」との質問には閉口した。それで、「そういう質問は困ります」と綴り、要するに、見知らぬ他人を無駄に困らせるようなことはやめてくださいと訴えているのだ。

 私もヘルニアの手術を大病院で受けたので、通院の際、病院の待合室で何時間も待った経験がある。ちゃんと予約時間に間に合うように来ているのだが、それでも2時間ぐらい待つのは普通だった。いうまでもなく高齢者の姿が目立つが、その人たちは、もう諦めて居眠りをしているか、あるいは、受付の看護師さんに、「自分の番はあとどれくらいか」などと、イライラして何度も聞いているかのどちらかだった。一方の私はと言えば、待ち時間を”死んでいる時間”にだけはしないように、ちゃんとエンターテインメントを用意してきていた。携帯用DVDプレーヤーで、当時流行っていた韓国ドラマを見ていたので、待つのはたいして苦痛ではなかった。もちろん、読書でもいいのだが、意外にもあれは、思ったより集中するので、後でどっと疲れてしまうことに気付いた。

 なので、ただ画面を見ているだけで、集中力も体力もたいしていらないドラマ視聴が一番楽でよかった。今なら、さしずめスマホがあれば、すべて解決するのだろう。そうやって待ち時間をやり過ごしていたが、幸いなことに、誰にも邪魔されることがなかった。誰も私の座っている席の隣にやってきて、話し掛ける人はいなかった。おそらく、「私、何歳に見えますか」などと、赤の他人に尋ねるような人は、寂しい境遇にある人で、誰かに自分の話を聞いてもらいたかったに過ぎないのではないだろうか。けっして、嫌がらせなんかではないと思いたい。

 そう言えば、見知らぬ人に話しかけられて閉口した経験が私にもあった。もうずいぶん前に、滅多に乗らない近所にあるバス停で、バスを待っていた時に先客の高齢女性に話し掛けられた。たぶんきっかけはありきたりな天気のことだったと思うが、適当に返事をして済ませようとしたら、どういうわけか、話が勢いをまして、バスが到着する寸前まで延々と続いた。誤解を招くので言っておくが、意気投合したのではなく、相手がこの時とばかりに自分のことを話し出して、こちらは聞くので精一杯になり、ズルズルと長びいただけのことだった。残念なことに、決して楽しい時間ではなかったが、相手の話を黙って聞いてあげるのも、一つのボランティアと言えなくないだろうか。そんなことを後から思った。

mikonacolon