人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ラジオが録れる機種は生産停止になりました

目の前が真っ暗になり、返品せざるを得なかった

 昨日私は、日頃から気になっていたICレコーダーの問題を一気に解決しようとビックカメラの店舗に飛んで行った。もちろん買う気満々で、売り場でお目当てのSONYのICレコーダーを見つけたときは、ああこれでやっと落ち着けると天にも昇る気持ちになった。新品ならば、もう電池の減りがどうのこうのと気にする必要もない。今新品を購入しておけば、7,8年は安泰?だと高を括っていた。見本の商品に付いているカードを一枚とり、レジに持って行き、会計を済ませた。もしも、その時、「この商品はAMラジオは聞けないのですか」とひとこと尋ねておいたなら、後で慌てふためき、絶望感に苛まれることもなかったのだろうが。いや、そうではなくて、いずれにしろ、どうしようもない無力感に襲われて、一歩も動けなくなることは避けようもなかったのだ。

 2,3日前も、ちょっと見るだけのつもりで、売り場に見に行った時から気になっていたのだ。何のことかと言うと、それは「FMラジオ付き」というそのICレコーダーに付いている機能の説明で、私はそのフレーズをAMラジオはもちろん付いているが、FMも聞けると言うように勘違いしていた。つまり、FMが聞けると言うのはおまけの機能で、しかもヘッドホンでという但し書きが付いていた。私がよさそうだと思って、買う気になっていたICレコーダーはラジオなど付いていなかった。その最悪の事態を予想していなかったわけではなかったが、現実にそうなのだと知らされると、冷や汗が出て、自分でも嫌になるくらい動揺していた。

 それでも後からそんな不幸な瞬間が訪れるとは信じたくない私は、レジでお金を払って意気揚々としていた。いつもなら大型書店にでも寄りたいところだが、欲しい物を手に入れて安心したのか、少し小腹が空いてきた。いつも行くカフェに入って何か食べようと思った。一番安い220円のクリームパンとアイスカフェラテを注文し、お気に入りの席に座った。だが、食べ始める前にそわそわしてしまい、ついつい先ほど買ったICレコーダーのパッケージをバックから取り出した。封を切って中から取扱説明書を取り出して、読み始めた途端、頭が真っ白になった。どこにも、どのページにも「ラジオを聞く」という項目がない。ただ、FMラジオについては記述があって、設定する必要があるし、ヘッドホンでしか聞けないと書いてあった。その時私はすべてを理解した、つまり私が買った機種にはラジオが付いていないから、当然録音もできないと言うことなのだ。

 のんびりとクリームパンを食べ、カフェラテを飲んでいる場合ではない。すぐにでも、ビッグカメラの売り場に飛んでいきたい気分だったが、もうひとりの自分が「慌てても仕方がないから、まずは落ち着いて」と囁く。一瞬にして、食欲は消え失せたが、無理矢理クリームパンにかぶりつき、カフェラテを飲んだ。居ても立っても居られないという興奮状態がひとまず収まると、一目散にビックカメラの店舗を目指した。まずは、売り場に戻り、再度並べられている商品を確かめてみるが、ラジオ付きのICレコーダーは見つけられなかった。私の目的は返品ではなくて、できる事ならラジオ付きのものに変えてもらいたいだけだった。レジに行って事情を話すと、すぐにICレコーダー担当の店員さんが現れた。

 驚いたことに、その人は、「今はラジオ付きの商品は生産停止になってしまったんです。申し訳ありません。確かに便利だし、また需要もあるのですけどね」などと宣った。私は返す言葉が見つからず、すごすごと引き下がるしかなった。心の中はすさんで壊滅状態なのに、わざと明るく振る舞った。なぜメーカーは勝手に商品の生産を停止してしまうのだろうか、理解に苦しむ。今やスマホのアプリ全盛の時代だからか。時代の流れで全て済ませていいものなのだろうか。それで思い出した、天声人語にこんなことが書かれていたことを。「そう言う時代なのだろうが、商品の進化のスピードについてゆけない。こちらはひとつの商品をできるだけ長く大切に使いたいと願っているのに、今の世の中はそれを許してはくれないのだ」

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