人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

人と一緒に食事ができない

原因は小学校の時の給食の時間!

 NHKで放送されている夜ドラ『作りたい女と食べたい女』を見ていて、「ええ~?そうだったの?」と意外な展開に面食らった。それは野本さんと春日さんの隣りに越してきた南雲さんの行動が俄かにクローズアップされたからだ。南雲さんはある秘密を抱えていた。最初から暗い印象が強かったが、今回はその秘密が明かされた。その秘密とは、南雲さんが人と一緒に食事ができないということで、もちろん、自分ひとりでは食べられるのだが。会社を辞めたばかりらしく、人と交わることを拒否しているのだとばかり思っていたが、そうではなかった。自分の部屋の前にある荷物を運んでもらったり、カギを失くした時に親身になってくれた春日さんにだんだんと心を開いていく。おそらく、この人なら信用できる、この人なら大丈夫とそう判断したからに違いない。

 「私は人と食事ができないのです」とためらいながら言うと、春日さんは「では、飲み物なら大丈夫ですか」と気遣ってくれた。普通なら厄介な人と思われるだけだが、春日さんは自分の弱さを認めてくれて、無理しなくていいという。重苦しかった心が、後ろめたいような気持ちがパアッと明るくなった。視聴者としては、なぜ南雲さんが「人と食事ができない」ようになったのか、物凄く気になった。でも、春日さんはその理由を尋ねようとはしなかった。

 ところが、南雲さんがそうなった理由というか、原因はあっけなく明かされた。それも、南雲さんが自ら春日さんに「おそらく、小学校の時の給食の時間からだと思うのです」と話し始めた。南雲さんはどうやら小食のようで、他の子より食べるのに時間がかかり、居残りで給食を食べていた。皆が掃除を始めたり、校庭で遊んだりしている間も、目の前の給食と向き合っていた。あまり食べたくないのに、強制的に食べさせられ、しかも皆の注目の的になっていた経験が、南雲さんには辛い記憶として残った。

 考えてみると、給食の量は皆同じだが、食欲旺盛な男子はいいとしても、女子の中にはそんなに食べられない子もいるだろう。自分の小学生の頃を振り返ると、給食を残すだなんてことはあり得なかった。そんな我儘な?行為は許されなかった。嫌いなおかずに入っている脂身だらけの豚肉がどうしても食べられなかった。口に入れるのも嫌だが、仕方がないので、とりあえず口に入れたら、気持ちが悪くて吐き出しそうになったことがある。それからは皆がやっているように、嫌いなものは食パンに挟んで家に持ち帰っていた。食パンは3枚もあって、どう頑張っても全部は食べられなかった。せいぜい2枚食べるのがやっとだったから、都合がよかった。なので、私は居残り給食の経験は皆無だった。

 ドラマの話に戻ると、南雲さんは小食らしいが、春日さんはできればもっといっぱい食べたい人だった。春日さんの家は後継ぎである弟が何かにつけて優先され、春日さんはもっと食べたいのに食べさせてもらえなかったという。女である自分は、男であるお弟より食べる物も少なくていいという、何とも封建的で、時代錯誤もいいところだが、春日さんの家ではそれが立派にまかり通っていた。子どもの頃、お腹一杯食べさせてもらえなくて、いつもお腹を空かせていた!?そんな家庭環境が今の春日さんを作っていた。春日さんは食事の時はお腹いっぱい食べる。好きなだけ食べると、幸福感に包まれる。

 そんな春日さんは言うまでもなく実家が嫌いで、盆正月にも帰省はしない。だが、最近父親から、祖母の介護で母親が疲れ切っているから、帰って来るようにと連絡が来るようになった。いつも感情を表に出さない春日さんだから、一見気にもしていないようだが、内心はどうなのだろう。そんなときだった、ベランダに佇んでいた時、突然、お隣の南雲さんから、「今晩は」と声をかけられた。春日さんには意外だったようだ。南雲さんに、人と食事ができないようになった原因を告白され、二人は暫し語り合う。

 その後は、お決まりの料理の時間で、今回はドーナツだった。ドーナツと言うと、てっきり、何処かのお店のを買ってきて食べるという頭しかないが、野本さんは手作りする。しかも、「こんな時間から、作るのですか」と、南雲さんにびっくりされるくらい、野本さんはフットワークが軽い。

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