人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

厚切りジェイソンさん

30代でFIRE達成!、でも生活は驚くほど堅実

 厚切りジェイソンさんを始めて見たのはあるテレビ番組で、『Why Japanese people? おかしいダロウ?」というネタが衝撃的だった。その時「この人は一体誰?」と思ったが、それからどんどん情報番組などのコメンテーターとしても見かけるようになった。芸人だけでなく、れっきとした外資系企業の社員でもあることが分かり、かなりのやり手だとお見受けした。最近はあまりテレビでお目にかからないなあと思っていたら、ある日の新聞のインタビュー記事で再会した。なんと、ジェイソンさんは30代の若さでFIRE(経済的自立と早期リタイア)を達成したとのこと、驚くよりも、さすがだと納得した。

 FIREした人と言うと、生活のためにあくせく働かなくてもいい人で、理不尽なことにも目をつぶって毎日を耐えなくてもいい人、つまりあらゆる面倒臭いことから解放された人なのだから、私などにとっては羨ましい限りだ。ただ、実際の彼らの生活は節約が基本だ。それでも勤め先に支配されるよりは今の自由な生活の方がはるかに素晴らしいのだと、あるトーク番組で語っていたのが印象に残っている。驚くべきことに、彼らには不安は全くなく、もう二度と以前の生活に戻るつもりはないと言うから目から鱗だった。

 さて、ジェイソンさんの話に戻ると、「僕の投資法はシンプル。支出を減らし、残りのお金を投資信託に回して待つだけ」というから、少し意外だった。何か投資について特別な才能や嗅覚の持ち主かと思っていたので、拍子抜けした。投資信託でインデックスファンドと言えば、以前読んで、あれよあれよという間にベストセラーになった原田ひ香さんの『三千円の使い方』を思い出す。あれはリスクも少ないが、じっと我慢して待たなければならない実に地道な投資の商品だ。ジェイソンさんは20代で投資を始め、会社の役員になった今でも当時と全く変わらない生活をしている。当時と比べると収入は20倍になったにもかかわらず、生活レベルを上げていない、この一貫したポリシーに貫かれた生きざまは到底真似ができない。

 そんなジェイソンさんは徹底して無駄を省く生活を実践している。たとえば、コンビニなどはいかないのはもちろん、『安売りのスーパーやプライベートブランドを愛用し、徒歩で行けるところは歩く』のを心がけている。驚かされたのはポップコーンの話で、『ポップコーンの豆を50キロ買い込んで5年間食べたら、普通のポップコーンを買うより7割安かった』そうで、正直そこまでやるのかと仰天した。いや、そこまでやらないと、生半可な気持ちではお金は増やせないのではないかと気付いた。

 だが、ジェイソンさんは普通の人と一線を画すようにそこまでお金にこだわって、いったい何が楽しみなのだろうとも思う。お金を使わないと得られない楽しみも世の中には五万とある。なのに、『旅行はどこも同じだから行かない』し、『食事は妻の手料理が大好き』で、『幸せのためにほとんどお金は使わない』というから、これはもう青天の霹靂というしかない。もしかしたら、お金が増えるのが楽しくて仕方がないのだろうか。まあ、それでもいいのだが、ジェイソンさんはお金の大切さを改めて気づかせてくれているし、『今日の1万円の無駄遣いは将来の百万円にもなりうる』との警告を私にしてくれている。それだけは心に留めておくことにしよう。

 節約に励む人には必ず、目標というものがあり、それは家を買うことだったり、家族旅行のためだったり、というのが一般的だ。これまで生きてきて、散々無駄遣いばかりしてきた感のある私にも、最近は少し変化が訪れた。基本的に、今を楽しまなくて、どうする的なスタンスで生きてきたが、これまでのこだわりを捨ててもいいのではという方向に気持ちが移行しつつある。例えば、それは大好きなお米のことで、今まで山形のつや姫という銘柄を買っていたが、ある日スーパーでカゴに入れようとして、ギョッとなった。確かそれまで2200円だったはずなのに、なんと2650円にも値段が跳ね上がっていたからだ。その時の私は自分のない頭で消費税を入れたらいくらになるかとざっと計算し始めた。どう見ても三千円近くなる、さてどうしようか、買うべきが買わざるべきか思案した。だが、隣においてあるあきたこまちを見ると、特売で2千円、こちらは嘘のように安い。それで、信じられないことに、これでもいいかという思考回路に繋がり、今はそのお米を食べているが何の問題もないのである。

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